小林リズムの紙のむだづかい(連載103)
清水正への原稿・講演依頼は qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー・宮沢賢治・宮崎駿・今村昌平・林芙美子・つげ義春・日野日出志などについての講演を引き受けます。
ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/
四六判並製160頁 定価1200円+税
京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
『ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp
http://www.youtube.com/user/kyotozoukei?feature=watch
【豚骨ラーメンの味】
中学校の頃、友達と校則違反をして先生に叱られたことがあった。校則違反といっても学校へ行く途中の通学路でカップラーメンを買って食べた、というとても可愛らしいもので、今から考えても「なんでそんなことで怒られないといけないの?お腹すいてる年頃だから仕方ないじゃん」と思うのだけど、そのときの校則というのは絶対的で、中学校という枠のなかで生きるには法律と同等みたいな扱いだった。
ハイソックスの色は白でないとダメとか、制服を着たままお店に寄ってはいけない、ゲームセンター禁止、学校でお菓子を食べてはいけない、髪の毛は縛らないといけないどころか髪の毛を結うゴムは茶色か紺か黒…etc。とにかく「地味で目立たない恰好と素行をしなさい」ということなのだった。
一緒にカップラーメンを食べたのは、お洒落で美人なクラスメイト。同級生からは憧れられているけれど先生からみたらちょっと問題児、というプチ不良の女の子で、私は彼女と同じ方角に住んでいたので噂話とか悪口とかを言いながら帰っていた。
自分でいうのも図々しいけれど、私はわりと真面目で品行方正なほうだったし(成績は悪かったけど)、先生のいうことにもそれなりに従順だったので、担任の先生はびっくりしていた。というより、落ち込んでいた。そして呼び出されてこう言われたのだった。
「お前は、あいつにそそのかされて断れなくてやったんだろう?」
そのときの先生の同情心に満ち溢れた表情は今でもくっきりと覚えている。気持ち悪かった。かけられた言葉が違和感だらけで、でものそ違和感をうまく説明できることができなかった。だから泣いた。するとまたもや勘違いした先生は
「俺にだけは本当のことを言え」
と真剣に訴えてくるではないですか。なに、本当のことって。「私はこんなことをしたくなかったんです…でも、断れなくて…」って言えばいいの?不良少女に振り回されて校則違反をしてしまった真面目な生徒…、を演じれば満足してくれる?
彼の頭のなかでの私は、校則も先生も裏切ることがない。と気づいて吐き気がしたのだった。でも、それ以上に気持ち悪かったのは、ここぞとばかりに泣くだけで可哀想な生徒になりきることしかしなかった自分。
もう10年近く経とうとしているのに、あのときの悔しくて情けない感情は忘れられない。自分を隠して人のイメージ通りに生きると後悔するよなぁと思う。あのとき「お腹がすいて食べたくなったのでコンビニ寄ったんですよ。ほら、成長期だし?いやぁ、朝の胃袋にしみるっていうか、美味しかったですね!やっぱり豚骨味がいちばん!」って言えばよかった。そしたら…。そしたら、どうなっていたんだろう。とりあえず私が一番好きなラーメンの味は豚骨ではなくて醤油なのだった。
小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/
twitter:@rizuko21
※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。