小林リズムの紙のむだづかい(連載25)

画・кёко

紙のむだづかい(連載25)


小林リズム

【ままならないハッピーエンド】

 去年だったか。親友と仙台に行ったとき、駅のホームの階段の真ん中で立ち止まっている兄弟がいた。小学校にあがったばかりくらいの弟が泣いていて、それを困った顔で2歳くらい年上のお兄ちゃんがなだめている。
「もうのぼりたくなぁい〜〜〜」
とぐずりながら階段にしゃがみこむ弟。お兄ちゃんは仕方なく「ほら、おんぶするから頑張って」と言って小さな背中に乗せようとする。そして、たどたどしい足取りで一生懸命階段を登っていくお兄ちゃん…。
こんな光景を目にして親友と「うわ、あのお兄ちゃん優しいねー」なんて話していた。弟のワガママを受け入れ、さらっと手を差し伸べようとする力があの年齢で身についているなんて、相当ハンサムな子に成長するのではないだろうか。けれど「でも10年後くらいに女性に振り回されるのもお兄ちゃんのほうだよね」「あー、そうだね」という結論にも至ったのだった。
 世の中には、振り回す人と振り回される人の2種類がいる。そしてだいたいがうまい具合に、振り回す人と振り回される人でセットになる。振り回す人は、自分の行動を制御してくれる人が必要だし、反対に振り回される人は自分の生活に変化を与えてくれる人が必要なのだ。かくしてあの弟くんは、10年後、女性を相当振り回しているに違いない。そしてそういう男の子って結構モテると思う。
 「やっぱり今日はここ行こうぜ」「えー、水族館って言ったじゃん」とか、「終電逃したから今からいくわ!」「え、今夜中の3時だよ…」と、相手の行動に振り回されているワタシ、に酔うのが好きな女の子はわりと多い。平凡な彼女たちが求めているのは良くも悪くもドラマチックで刺激的な何か。そしてそんな世界に引っ張っていく突拍子もない彼らは、彼女たちにとって魅力的にみえてしまうのだ。
 同じように「今すぐフラペチーノの桜味が飲みたいから買ってきて!」「勘弁してくれよ…」とか、「今起きたから車で迎えに来て」「はいはい…」と、相手を巻き込んで振り回しているワタシ、に快感を覚える女子もいる。彼女たちは根本的な部分から自分本位で、相手が都合通りに動いてくれるのが当たり前だと思っている。無理やりにでも相手を自分の世界のなかに連れ込んで、パワーをごくごくと飲み込んでいく。
 よって、あの兄弟ふたりの10年後を想像してみると…。お兄ちゃんが好きになった大人しめの女の子を、きっと弟に略奪される。弟思いの兄は決して恨むことはせず、ひとりで受け止めようとする。しかしそんなお兄ちゃんのもとに現れたのは「何落ち込んでるのよ」と、無神経で図太い女性。弱っていたお兄ちゃんは気付くと彼女のペースにまんまと乗せられ振り回される道を歩んでいくのだった…。というような感じ?あまりにも報われない?でもほら、ないものねだりっていうの?まあこれはこれでひとつの愛の形として、ハッピーエンドなのかもしれない。