小林リズムの紙のむだづかい(連載421)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックジャパンで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

小林リズムの紙のむだづかい(連載421)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムさんがエッセイ本をリンダパブリッシャーズ(http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru)から刊行することになりました。本のタイトルは『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった八日で辞めた話』発売日四月五日。
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru
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小林リズムの紙のむだづかい(連載421)



【ハルキストとの勝手な相性診断】


 今まで出会ったなかで村上春樹が好きっていう男の子はいいなぁと思う人ばかりだったけど、実際に仲良くなるとうまくいかなくなることが多い。私が直感的で性悪であらゆる面倒なものを除外しているタイプだから、相手の期待に応えることができずに傷つけてしまうのだ。そして徐々に彼らと関わること自体が負担になってくる。この私がどうしても応えられない「相手の期待」についてもっと直接的に、そして意地悪く説明すると、彼らが大事にしている「孤独」や「時間の楽しみ方」に対して「(笑)」をつけたくなり、汚して難癖をつけたくなるということだ。

 私にとっての「孤独」や「時間の楽しみ方」は村上春樹の世界と比べるとずっと汚い。何日間もお風呂に入らないで外界との音信を断ち、ベッドに横たわりながらスーパーで買ったかまぼこに板付きのまま歯型を残しているときに孤独を感じるし、大きな紙パックに入った料理酒を適当なカップに注いでごぶごぶ飲んだり、羊羹を切らずにかじったりするのがひとりの時間の楽しみ方だったりする。
 けれど村上春樹は決してそういうやり方はしない。心にぽっかりと穴のあいたままひとりでお洒落なバーに入ってチーズだかナッツだかをかじり、近くの人と比喩表現たっぷりのお洒落な会話を楽しむことを真の孤独とするし、物思いにふけりながら音楽をかけ、かみそうな名前のウィスキーをひとりで嗜むことが時間の楽しみ方とする。俗物である私にとってそれはひどくリアリティーがないし、自分に酔いしれて自己愛におぼれているだけのようで、見ていてこっぱずかしい。
 彼らの自己の内面世界に浸りっきりの、自覚症状のない痛さには苛立ちを覚える。なぜか。本当は私も村上春樹ワールドにあるような自分や人生にじっとりとひたって酔いしれる、えぐくて気持ち悪い感情を持っているからだ。そしてその感情に振り回されて、ひどく痛々しい行動をしてしまって振り返ると恥ずかしくて死にたくなる。だから、私の嫌いな気持ち悪さを全面に肯定するサマをどうしても受け入れられない。同じように春樹ワールドに、私の持つ汚らしいほうの「孤独」や「時間の楽しみ方」も絶対に受け入れてもらえない。はじめから拒絶して境界線をつくられていて、別世界だと隔離されている。

 私がこれまで出会ってきた人たちのなかで、自らをハルキストだと言っていた女の子は病んでいる子が多かった。派手なネイルに茶髪の巻き髪のお姉さんタイプや、ショートカットの黒髪のナチュラルタイプ、ボブヘアの最先端お洒落系ガールなど彼女たちの外見は幅広い。でも何かしらの問題がありそうな部分が共通していて、彼女たちとは初対面であっても総じて仲良くなれる。それは偽物の社交性や、相手に警戒心を抱くところ、愛想笑いを得意とする部分が似ているからかもしれない。だからといって、見えない壁が分厚くそびえ立っているから深く相手の領域に入り込むことはできないし、彼女たちも私のなかに入ってこようとしないから、本当の意味で仲良くなれることはほとんどない。ハルキスト女子のもつ繊細でデリケートな部分を、私は本能的に自分と重ねて気持ち悪く感じ、嘲笑って壊したくなる。彼女たちは同じく本能的な力で自分たちの大切にしているものを壊そうとしている私のことを察知して、距離を置こうとする。ハルキストの病み方は、外側からの視線とナルシズムのエキスがたっぷり詰まっていてお洒落なのだ。そしてそれは自覚していなければしていないほど清くてグロテスクである。

 たとえ同じものを持っていても、片方がそれを嫌らしいものだと否定して、もう片方が高尚なものだと思っていればそれは相容れない。同じように「良い」とか「悪い」という価値観を持てないのなら、始めから持っていないほうがずっといい。

 結局自分と相性の良い人はどんな人なのかといえば、私がまったく良いと思わなかったり、読まなかったりするジャンルの本を好きだという人とか、そもそもあまり本を読まない人かもしれない。精神的にヘルシーで、エネルギーを外側に放出していくタイプ。「私の苦しみなんてちっともわからないでしょ!」って泣きながらお皿とかコップとか投げつけても「わからねーよ!」「わかるわけないでしょ!」とあっさりと言ってしまう感じの。皮肉や嫌味を言っても「性格悪いな」あるいは「言っていることがよくわからん」のひとことで終わらせる感じの。もう絶対にこの人とはうまくやっていけないと思いながら、自分とまるで違う性質を持っている彼らから発される光から目を逸らせない。そういう図太くて図々しくてたくましくて嫌らしいものの含まれないシンプルな生き方って、絶対に手に届かないから近くにあってほしい。


 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/

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