『デヴィ・スカルノ回想記』(草思社)

デヴィ・スカルノ回想記』 草思社は四日かけて熟読した。わたしはこの回想記を一遍のすぐれた小説を読むように想像力を刺激されながら読んだ。精神の緊張なくしては読みすすむことができなかった。時には涙を流すこともあった。家族のこと、スカルノ大統領のこと、大統領をめぐる女たちの確執と愛憎劇、パリの社交界の裏表…どこをとってもすさまじい人間劇が展開されている。夫人の回想記は読みようによっては膨大な政治劇にも恋愛劇にも発展しよう。インドネシアの独立を勝ち取ったスカルノ大統領に焦点を与えれば、恐るべき光と闇の権力闘争の舞台が繰り広げられることになろう。大統領に愛された女たちの悲喜劇も浮上してくるだろう。わたしが感動したのは、夫人がこの回想記で生の声を発していることである。毅然とした精神性の高さ、信ずるものに向かって努力を惜しまないその向上心と誠実、女として人間としていつも闘いの場に自らをおいて精進しつづけている姿は読む者の心をふるわさせずにはおかない。わたしはいつも夫人のブログを読んで、その精力的な活動に感服しているが、この回想記を読んで、夫人のエネルギーがどこから湧いてくるのか、その秘密の一端に触れたようにも思った。夫人にとって母と弟の死がいかに重いものであったか。夫人は美しい女性だが、その精神はたくましい男性的な力強さに満ちている。スカルノ大統領に対しても、単に敬愛し服従するのではなく、ときと場合によっては毅然として自分の意見を申し述べている。命の危険を冒してでもなすべきことはなす、というまさに武士道精神を地で行くような行動もとっている。夫人が、今日の日本のふがいない状況に立腹する気持ちは痛いほどわかる。自己保身に明け暮れ、自分の意見をもたず、ただただ回りの空気に同調して生き延びようとするだけの、卑小な人間たちが多くなった。夫人が大統領と結ばれたころ、日本の週刊誌は恥も外聞もなく叩きまくった。ゴシップとスキャンダルにくじけず、今もなお強く、毅然とした姿勢を保持されている夫人の真摯な生きる姿にわたしは敬愛の念を抱いている。『デヴィ・スカルノ回想記』を多くの日本人に読んでもらいたいと思う。

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炎天下の手賀沼公園を散歩
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