随想 空即空(連載208)

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随想 空即空(連載208)

清水正  

 

 ロジオンは自らが犯した〈犯罪〉(преступление)に〈罪〉(грех)の意識を覚えたことはない。日本で最初に『罪と罰』を翻訳した内田魯庵は英訳「crime and punishment」(犯罪と刑罰)を「罪と罰」とした。日本人にとって〈罪〉と〈犯罪〉の概念は曖昧で厳密に区別されることはないが、前者は宗教的な意味合いを含んでいるとは言えよう。内田魯庵の訳『罪と罰』が日本の翻訳者に受け継がれていることにはそれなりの理由がある。『罪と罰』をロシア語原典から初めて翻訳紹介した中村白葉は逐語訳で定評があるが、彼は『преступление и наказание』を直訳『犯罪と刑罰』にせずに内田魯庵のそれを採用した。キリスト教徒にとって〈罪〉(грех)は原罪や神に対する反逆を意味しており、それはそのまま〈犯罪〉(преступление)に置き換えられるものではない。ドストエフスキーが意識的に主人公ロジオンに試しているのは〈踏み越え=犯罪〉であって、〈罪〉(грех)ではない。しかし、ドストエフスキーはロジオンの〈犯罪〉を通して〈罪〉を問題にしていることも確かであって、それ故に内田魯庵の訳語は期せずして『罪と罰』の本質に迫るものとなっている。

 ロジオンの殺人が〈犯罪〉(преступление)の次元に止まっていたのであれば、『罪と罰』は文字通り犯罪小説の範疇に収まってしまったであろう。ロジオンが〈犯罪〉を通して求めていたのは何だったのか。このことが改めて問われることになる。「はたしておれにアレができるだろうか?」を逐語的に言い直せば「おれにアレができる能力があるのだろうか?」になる。要するにロジオンは、自分が〈非凡人〉(ナポレオン)としての能力が備わっているのだろうかと自問しているわけである。もちろんロジオンは改めて自問するまでもなく、自分がナポレオンでないことは分かっている。分かっていながら、何度も同じ問いの前に佇まなければならなかったところにロジオンの特殊性がある。ロジオンにとって〈アレ〉は魅惑的な思想であり、彼は当初から単なる屋根裏部屋の思弁家にとどまることに飽いていた。屋根裏部屋で果てしのない妄想をどんなに膨らませても、そんな内的おしゃべりからは何にも生まれない。〈おしゃべり〉からは〈おしゃべり〉しか生じない。だからこそロジオンは〈おしゃべり〉を止めるしかないと考える。それほどロジオンにとって〈アレ〉はどうしても打ち払うことのできない魅力的な妄想であったのである。作者はロジオンのこの〈妄想〉に徹底的に寄り添う〈悪魔=神〉の役割をはたしている。

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