プーチンと『罪と罰』(連載35)

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プーチンと『罪と罰』(連載35)

清水正

 

 米川正夫ドストエフスキーの言葉に関して慎重な中立性を保持しているが、この点については後で言及することにして、まずはドストエフスキー自身の文章を見ることにしよう。ドストエフスキーは近東問題(露土戦争)に関して「ロシヤは潔白に行動するであろう――これが問題に対する解答の全部である」と書いた後で次のように書いている。

 

 ロシヤの利益はほかでもない。必要とあれば、火をみるごとく明らかな不利に向かって、明々白々な犠牲にすら向かって邁進する、ただただ正義を破るまいとすることである。ロシヤは過去幾世紀の遺産であり、今日まで不撓不屈に遵奉してきた偉大なる理念を、裏切ることはできないのである。この理念は、なかんずく、スラヴ民族の大同団結である。しかし、この大同団結は侵略でもなければ、暴力でもなく、人類に対する一般的な奉仕のためである。第一、ロシヤがその政策において、自国の直接の利益のために行動したことが、いつにもせよ、しばしばあっただろうか? それどころか、ペテルブルグの歴史が始まって以来、終始かわらず、無私無欲の態度で、何よりまず他国の利益のために奉仕してこなかったか。その態度たるや、もしヨーロッパが常にわれわれを眺めている不信と、猜疑と、憎悪の目を棄てて、その反対に、明朗な心をもって見ることができたならば、ヨーロッパを驚倒させたはずなのである。もっとも、ヨーロッパでは一般にだれもかれも、何事につけても無私無欲などは信じない。それはひとりロシヤの無私無欲ばかりではないのだ。むしろ彼らはかたりや、愚劣のほうをより多く信じるであろう。しかし、われわれは毫も彼らの宣告を恐れることなどいらない。このロシヤの没我的な無私無欲のうちにこそ、ロシヤの全力があるのだ、いわば、ロシヤの全人格と、ロシヤの使命の全将来が存するのである。ただこの力が時として、かなり誤った方向に向けられたのを憾みとする。(『作家の日記』上巻・367)

 

 『作家の日記』の中からドストエフスキーの近東問題に関する主張を取り上げると、だいたいここに引用した箇所と重なる。〈スラヴ民族の大同団結〉は〈侵略でもなければ、暴力でもなく、人類に対する一般的な奉仕のため〉であり〈没我的な無私無欲の態度〉に立脚している。ドストエフスキーは戦争自体を否定する言葉をどこにも記していない。ドストエフスキーロシア正教徒としてのロシア民衆を信じており、彼らの戦争加担の行動を心から支持している。彼が非難するのは戦争に反対する平和主義者や人道主義者であり、彼らはロシアの民衆を理解できないヨーロッパかぶれの〈賢人たち〉として皮肉の対象とされている。彼は戦争に関する賛否両論を冷静に客観的にとらえるというよりは、明確に自分の立場を公にしている。『作家の日記』を読むかぎり、彼は逃げも隠れもしない戦争肯定論者として振る舞っている。彼はロシア正教の名において、キリストの名においてロシア民衆の戦争加担を揺るぎなき信念に基づいて支持しているのである。

 ドストエフスキーにとってロシアの民衆は「祈祷こそ知らないけれど、キリスト教の本質、その精神と真実は彼らの内部に保存され、固く根を張って、数々の陋習欠点にもかかわらず、全世界の国民中おそらくその比をみないほどである」(『作家の日記』下巻・76)として捉えられている。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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表紙

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