「畑中純の世界」展を観て(連載24)

今年は宮沢賢治生誕百二十周年にあたる。今まで単行本に収録していない千五百枚強の賢治童話論
を刊行することにした。『清水正宮沢賢治論全集』第二巻として今年中に刊行する予定で準備に入った。現在、校正中。

清水正が薦める動画「ドストエフスキー罪と罰』における死と復活のドラマ」
https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk

清水正の講義・対談・鼎談・講演がユーチューブ【清水正チャンネル】https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%AD%E3%82%8Bで見れます。是非ご覧ください。

京都造形芸術大学マンガ学科特別講義(2012年6月24日公開)
ドラえもん」とつげ義春の「チーコ」を講義

https://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg

清水正ドストエフスキー論全集』第八巻が刊行されました。


清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。
清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックジャパンで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


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四六判並製160頁 定価1200円+税


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畑中純の世界」展を見て
 中江 結依華 



               

 江古田キャンパスの芸術資料館で、私ははじめて畑中純さんの版画や漫画に触れることができました。
 青年漫画に ほとんど触れることのない私は、週刊サンデーに
300回も連載された、『まんだら屋の良太』も全く知りませんでした。
 子供の頃に読んだ宮沢賢治著作の『注文の多い料理店』の1シーンの版画が展示されているのを観たときは、「あっ!これ知っている!」と馴染みのあるものを見つけて嬉しくなりました。『注文の多い料理店』は、二人の兵士がレストランに入って最後に食べられてしまう話です。畑中純さんの版画のタッチは、怖い話を想起させる迫力を持っています。極端に大きく描かれた猫はとても不気味でした。描かれている物の対比は少しアンバランスで、そこがなお怖さを増しているようでした。
 畑中純さんの漫画に登場する男性も女性も、老いも若きも性別年齢の特徴が強調されて描かれていると思います。少女漫画に登場する美女美男は出て来ないので、庶民的な感じで
ざわざわ感があります。絵の輪郭は太く、水彩画もイラスト的な感じで、花の絵も写実的ではありませんでした。使用しているは多いとは感じませんし、光溢れる感じの絵ではありません。
 人物の絵はとても特徴があり、人が簡単に真似できるペンタッチではなく、一目では畑中純さんの作だと、言い切れる作風を確立していました。
 『まんだら屋良太』は、ユーモアあり、ペーソスあり、お色気もたっぷりな10年間300回連載された漫画です。読んだことのない私は本の表紙絵をみて、忘れられなくなる絵だな、と思いました。温泉宿「まんだら屋」を舞台に、登場してくる人物の表情・動きは、エッチなものもありますが、ほのぼのとしていて、昭和の時代を知ることができます。漫画には、畑中純さん独特のリズム感や空気が流れている感じがしました。また漫画に出てくる女性は何処となく奥さんに似ていて、これは畑中純さんが、理想の女性と巡り合えたからなのだと、思いました。
 畑中純さんの奥さんの講演では、やはり「女性は奥さんがモデルになっているのですか?」という質問が出たほどです。一方良太は畑中純さんの青年時代だったのではないか?少なくとも
心理的には、畑中純さんだったのではないか?遺影と良太の顔はなんとなく似ているではないか?と思ったのです。
 畑中純さんの出身地である九州の小倉まで、赴かず版画や漫画を見られたのはラッキーでした。今にも音や声が聞こえてきそうな畑中純さんの漫画、その作風は初めて鑑賞した私にも、
大きなインパクトで忘れられないものになりました。