ユッキーの紙ごはん(連載41)
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ユッキーの紙ごはん(連載41)
【急がば回れ 恋路は長い】
ユッキー
私に恋愛相談をすると、返ってくるアドバイスらしきものが必ず 「〜らしいよ」 「〜って聞くよ」 という伝聞口調であることを約束できる。
この件に関して反省する気は全くない。普段から恋愛経験の少なさ、恋愛市場における需要のなさを主張しているのだから、そんな私に相談するほうが間違っている、という傲慢な態度を省みるつもりはない。何なら誰か、私の涙を拭ってくれてもいいんじゃないかと思うことすらある。
そんなわけで私がする恋愛アドバイスは、いろいろなライターやエッセイストの書く恋愛コラムあるいは友人知人から聞く恋愛話をツギハギしたものだ。
先日、友達から電話がかかってきた。ほんの1週間前は付き合いたての彼氏の惚気を聞かせてくれたはずなのに、「もうだめかもしれない」 「どうしてこうしてくれないの、って不満が溜まっちゃう」 「彼は私じゃなくてもいいんじゃないのかな」 と泣いている。悲しいかな、愛は脆い……。
話を聞いていると、友達の彼氏にはたしかに問題があるが、友達もなかなかどっこいどっこい。人気バンドあたりが 「傷付けあう恋」 「すれちがう僕ら」 とでも歌い出しそうな付き合い方。
最初は穏やかに、「付き合ったばっかりだし、そんなに早く結論を出さなくてもいいんじゃないかなあ」 と返していた。けれど、素直でいい子な友達は 「そうだよね」 と言いつつ、「でも……」 と逆接の接続詞を付け足すので、思わず、ツギハギ恋愛アドバイスが私の喉から飛び出してしまった。
「白馬の王子様なんていないって言うよ」 「本当に好きならこうしてくれるはず、って思うのは良くないんだってさ」 「許しあうのが大事、って彼氏と付き合って3年になる友達が言ってたよ」
そのあたりでやめておけばいいのに、深夜のテンションが災いし、勝手に盛り上がった私は尚も続けた。
「いつだって自分が求めている言動をしてくれる相手なんてどこにもいないよ。他人にとって自分がそういう人間になれないように」
本当に、やめておけばよかったと思う。自分の言っていることに自分で傷付いてしまった。
恋愛に限らず、私も他の誰かと関わりあうなかで、多かれ少なかれ失望されているんだろうなあと思った。時には 「どうしてこうしてくれないの」 「欲しい言葉はそれじゃない」 と思われているのに、私はそれに気付かずヘラヘラ生きている。
今この瞬間、友達に 「どこから拾ってきたのかよくわからない恋愛アドバイスしてくるなあ」 「話を聞いてほしいだけなのに」 と思われている可能性も0ではない。
そう思うとなおさら、彼氏を大事にしたら?と言いたくなった。彼女が彼氏に失望しているように彼氏も彼女に少しは失望しているだろうに、にもかかわらず、「君だけが好きだ」 といってくれる存在なのだから。それだけで、他人に失望される現実の悲哀はチャラになる。
後日、友達は彼氏と仲直りした。その彼氏曰く、
「彼女のワガママなところが好き」。
おわかりだろうか。つまり私のツギハギ恋愛アドバイスもどきは、全くの無意味だったということだ。
「人の恋路に首を突っ込んでも良いことは一つもない」 、友人のアドバイスが身に染みた。
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