ユッキーの紙ごはん（連載15）

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ユッキーの紙ごはん（連載15）

【スマートな恋なんてファンタジー】
ユッキー

「彼女にバレなきゃいいでしょ。あえて言わなきゃいいんだもん、他の女の子と遊んでるなんてこと。知られなかったら、やってないのと一緒だよ」

そう言ったのは、付き合って１年７ヶ月経つ彼女がいる男と、付き合って１年経つ彼女がいる男だった。
彼らは自分の彼女が大変に自慢だそうで、頼んでもないのに写真を見せてきた。たしかに腹が立つくらい可愛かった。と同時に、かわいそうになった。こんなに可愛いのに、彼氏に浮気まがいのことされてるんだ……。

しかし彼らは、「いいんだって。どうせ彼女だって他の男と遊んでるよ。こっちに言わなきゃ俺は別にいいし。そうすれば俺は知りようがないじゃん。知らなかったら、そんな事実ないのと一緒だよ」とも言っていて、反省する気なんて更々ないようだった。

知らなければ、無いのと一緒。
たしかにそうだなあと思う裏側で、本当に？とも思う。

だってそんなに上手に隠せているのだろうか。「どうせ彼女だって他の男と遊んでる」と思うのは彼女を疑う余地があるということで、それって本当に「知らない」うちに入るのかなあ。ちょっとは知っちゃってるじゃない、と思ってしまう。たとえ彼の勘違いや思い込みであろうとも。

帰る時、「バレなきゃ彼女以外とデートくらいは大丈夫論」をかました男２人のうち、１人がわざわざ私の乗るホームに来て一緒に電車を待ってくれた。
こういうところがモテる秘訣なんだろうなあと感心していたら、彼は「俺、意外とちゃらくないよ」と呟いた。

「女の子にさ、自分からそんなに言えないもん。誘ったりできない。怖くて」

怖いって何が？彼女にバレたら振られちゃうのが？と聞いたら、彼は「そうかも」と言った。

自分も知らないから彼女にも知られていないから平気でいられるんじゃなくて、やっぱり少しは知ってしまっているから、それを見ないようにしているんだろうか。見てみぬふりで、他の異性と遊ぶことで「お互い様」にして、嫉妬しすぎないようにしているんだろうか。それでもバレて彼女に振られてしまうのが怖いから、自分からはなかなか積極的になれない。

そう思うと、さっきまで恋愛経験豊富で慣れていて達観している男性に見えていた彼が、急に年相応に見えた。

やがて電車が来て、私だけが乗り、扉が閉まる瞬間まで彼は見送ってくれた。
あの可愛い彼女といつまでも上手くいくといいと思ったけど、そんなことを恋愛経験が極端に少ない私が言ったところで、なんだか嫌味にしか聞こえないと思って止めた。

付き合うって、人を好きになるって複雑だなあ。

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