小林リズムの紙のむだづかい(連載201)

小林リズムの紙のむだづかい(連載201)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
清水正の著作はここをクリックしてください。

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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/


小林リズムの紙のむだづかい(連載201)
小林リズム
 【誕生会 人が刺された渋谷にて 夜が始まる 世界ってなんだ】
 

 友達の誕生会を渋谷にあるお店で開催するというので、わたしは急いで電車に乗り込んだ。そのときまだ大学生で、アルバイトをしていて、少し長引いたので遅れてしまいそうだった。
「もしもし?ごめん、ちょっと遅れそうだから先に行ってて」
と電話をかけると、もうすでに出来上がっている様子の友達はハイテンションに、わかった、待ってるぅ、と答えた。わたしはその“待ってるぅ”友達のいる場所へ、早く行きたかった。電車に乗りながらツイッターを適当に流し見していたら、「渋谷」というワードで目が留まった。
東京メトロ副都心線の渋谷駅で男性が男に刃物で切りつけられ大けが。犯人は逃走中―』
なんと。わたしはその人が刺された渋谷に、今、向かおうとしている。それも、友達の誕生会という、おめでたい内容で。

 渋谷駅に着くと、みんなが当たり前みたいな顔をして颯爽と歩き出していた。きっとこのなかには渋谷で通り魔があったことを知っている人もいるに違いない。それなのに、みんな関係ないような平気な顔で目的地に向かっている。もちろん、わたしも。そしてそこでこれから友達を祝おうとしているのだ。

 あんなに居心地が悪く違和感があったのに、心のなかで動揺したのに、友達と合流してお酒を飲んだらすっかりそのことを忘れてしまった。「おめでとう!」って言った。くだらない話とか、恋愛の話で盛り上がった。楽しかった。酔っ払った頭で考えると、なんでもできるような気がした。

 気づくと終電間近で、怠く重くハイテンションな思考で「そういえばあの通り魔事件はどうなったんだろう。刺された人は?犯人は…?」と思い出した。とてもじゃないけれど、人が刺されることと、誕生祝いをしたことが、同じ場所や近い時間で起こったことだとは思えない。無関係でいられるのだ。そう思ったら世界はいつも自分の内側だけでできあがっている気がした。同じように、わたしが泣いても悲しんでも、怒っても悔しがっても、病気になっても、刺されても、むしろ死んでしまったって、世界は変わらない。自分が思っているよりもずっと、残酷に単純に通り過ぎていく。何もなかったみたいにして、時間と共に通り過ぎる。その絶望感と、故の解放感で頭が真っ白になった。

 世界ってなんだろう。わたしにとって、誰かにとって、人間にとって、世界ってなんだろう。そして、世界にとって、人間にとって、誰かにとって、わたしってなんだろう。そのときわたしは進路に迷っていて、自分の人生という壮大なものに向き合おうとしていたのだけれど、でもそんなこと、世界は知らんふりして情報と、物と、人と、金と、その全部を排出し続けていた。

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/

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