林芙美子研究のための取材旅行(連載5)

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林芙美子研究家の清水英子さんにインタビュー

私と山崎行太郎さんが広島県立尾道東高等学校林芙美子が通った尾道高等女学校)の図書室の林芙美子コーナーを見学している間、山下聖美さんと藤野智士くんの二人はこの間、校門前の喫茶「ファンファン」で待機。四人でアイスコーヒーを飲んだ後、タクシーで清水英子さんの自宅へと向かった。運転手が途中で道を間違えたりしたが、約束していた二時ぴったりに着くことができた。英子さんは玄関前まで出迎えてくださった。
 お互いに自己紹介の挨拶を交わした後、二時半頃から四時近くまでインタビューが続いた。私は英子さんから彼女が監修した『尾道林芙美子』をいただき、わたしは『私家版・林芙美子屋久島』をさしあげた。英子さんは尾道市立図書館に勤務中に林芙美子研究に没頭し三冊の著作を刊行している。夫が四十八歳で亡くなり、その後、数年間は何もする気が起こらなかったが、林芙美子の文学に勇気づけられ研究に励むことができたということであった。「これからどのような研究をされたいですか」の私の質問に英子さんは「なにもする気がしない」と答えられた。林芙美子研究に関してはすべてをだしつくしたとも言われた。研究に注ぎ込こまれた精力の半端のなさに頭の下がる思いがした。同時にジーンと胸に迫るものがあった。

清水英子さん宅















 英子さんの二階の書斎の壁には尾道女学校時代の林芙美子の写真が飾られていた。この写真は英子さんが監修した『尾道林芙美子』の扉にも採用されていた。林芙美子の精神性の高さと品位がよく出ている写真である。窓からは穏やかな風景が広がっていた。わたしは取材の記事を英子さんに読んでもらおうと、彼女のパソコンに「清水正ブログ」を立ち上げ〈お気に入り〉に入れて置いた。



 帰り際、英子さんはわれわれ一行を姿が見えなくなるまで見送ってくださった。取材中、研究者の厳しさと孤独を直に感じさせられたが、終えた後のすばらしい笑顔がわたしの胸に刻まれた。わたしたちは爽やかな感動を胸いっぱいに感じながら新尾道駅へと向かった。