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プーチンは核のボタンを押せるのか
ここ四日ほどはもっぱらプーチンのウクライナ侵攻問題を取り上げている動画を観ている。わたしはドストエフスキーの『罪と罰』のロジオン・ラスコーリニコフの抱いた思想(非凡人の思想)をプーチンに適用して考えている。ロジオンは老婆アリョーナを訪ねる前に次のように呟いている。「いったいおれにあれができるんだろうか? あれはまじめな話なんだろうか?」(Разве я способен на это?
Разве это серьезно?)と。〈あれ〉(это)は原文ではイタリック体になっており、作者からこの言葉に注意せよという信号が送られている。〈あれ〉は従来〈老婆アリョーナ殺し〉と見なされてきたが、実は〈あれ〉には〈皇帝殺し〉や〈神殺し〉最終的には〈復活〉の意味が込められている。こういった点に関しては何度も書いているのでここでは繰り返すことはしない。今回はウクライナ侵攻を決断したプーチンとロジオンの〈あれ〉に関して簡単に触れるにとどめる。
ロジオンは〈非凡人〉は「良心に照らして血を流すことが許されている」と考えている。ロジオンの論文を新聞で読んでいた予審判事ポルフィーリイは「非凡人にはすべてが許されている」という解釈を挑発的に口にする。プーチンが自らを〈非凡人〉と見なして、「はたしておれにあれができるだろうか?」と考えているとすれば、彼にとっての最終的、具体的な〈あれ〉は〈核爆弾のボタンを押す〉ということになる。
ロジオンは先に引用したつぶやきを次のように続けている。「よせやい、なにがまじめな話なもんか。空想をもてあそんで、自分の慰みにしていただけじゃないか。つまり、玩具だったのさ! そう、玩具というのが、どうもぴったりするようだな!」(Совсем не серьезно. Так, ради фантазии сам себя тешу; игрушки!
Да, пожалуй что и игрушки!)と。ロジオンは神秘的なデモーニッシュな力の作用によって老婆アリョーナと彼女の腹違いの妹リザヴェータの頭上に斧を振り上げ叩き殺してしまう。プーチンの第一段階の〈あれ〉(ウクライナ侵攻)は実行されてしまったが、最終的な〈あれ〉(核戦争への突入)は〈玩具〉の次元にとどめておかなければなるまい。人類滅亡後の「血で汚れたる地上世界の更新」という使命を帯びた、何人かの生き延びた〈選ばれたる者〉たちのドラマはシベリアの監獄でロジオンが見た悪夢にとどめておきたいものである。
いずれにしても、さまざまな現実の事象が十九世紀半ばに書かれたドストエフスキーの文学を一歩も踏み越えてはいないということだけは言っておこう。
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エデンの南 清水正コーナー
動画「清水正チャンネル」https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
お勧め動画・ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s
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「清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。
令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ
発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
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