プーチンのウクライナ侵攻とトルストイの「神の王国は汝らのうちにあり」
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プーチンのウクライナ侵攻とトルストイの「神の王国は汝らのうちにあり」
プーチンのウクライナ侵攻は未だ決着がつかないまま、ロシアの兵士とウクライナの兵士(及び国民)が戦争の犠牲となっている。前回に続いてもう一度、トルストイの「神の王国は汝らのうちにあり」(一八九一年~一八九三年)から引いておこう。今日、どれくらいの人間がトルストイの文学に接しているのだろうか。「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「復活」といった世界的な作品さえ、読破した者はごく少数であろう。ましてやトルストイの宗教論まで読んでいる者はさらに少ないと思われる。次に引用する箇所はまったく古びていない。人間はまったく変わっていないし、何ら歴史から学んでいないということだ。
「われらは矛盾に満ちた時代に生きている――と国際法の教授コマローフスキー伯爵はその学術論文の中に書いている――各国の新聞紙上には平和への一般の要望、諸国民にとってのその必要性がたえず表明されている。同じ意味のことを政府代表者も、民間人も語り、公共機関としては議会の演説の中でも、外交談判でも、相互条約の中でもうたわれている。しかるに一方では、政府は年々、国の軍事力を増大し、新たな租税を課し、公債を募り、かくして現在の非合理的な政治のあやまちを負う義務を遺言として未来の世代に残している。言行の間におけるこの矛盾のなんとはなはだしきことよ!
「もちろん政府はこれらの手段の弁明としてこれらすべての支出や軍備のもっぱら防衛的性格を指摘するが、それでも特に関心を持たぬ普通人には、すべての強国がその政策において一致して防衛という唯一の目的を追求している時にはたしてどこから攻撃を期待し得るのかわけがわからない。が、現実にはこれは、あたかも各列強が他国の攻撃を常時待ち受けているが如き観を呈しており、そしてその結果はといえば――全般的な不信と、他の列強の力を凌駕しようという政府の超自然的な緊張である。かかる競争はそれ自体が戦争の危機を増大させるものである。何となれば、国民は拡大された軍備に永い間堪えることはできないから、現状や不断の脅威という不利よりはむしろ早晩、戦争を選ぶからである。したがって全ヨーロッパに全面戦争の火の手をあげるにはどんな些細なきっかけでも十分だということになる。かかる危機が圧倒的な政治的、経済的災厄よりわれわれを回復させてくれるかもしれぬと考えるのはあやまりである。近年行われた戦争の経験は、いかなる戦争も民族間の敵意を先鋭化し、軍国主義の重圧の苦しみと耐え難さを増大し、ヨーロッパの政治経済状態もいっそう悲惨な、混沌たるものたらしめたにすぎないことをわれわれに教えている。(河出書房新社版トルストイ全集第15巻「宗教論Ⅱ」より)
ウクライナにおける戦争についてそのまま語っているように思える文章である。トルストイは当時入手し得るかぎりの戦争に関する論文を読み、自らの論に引用している。「右の頬を打たれたら、左の頬をだす」キリスト者が、なぜ戦争に参加しなければならないのか。トルストイは福音書に書かれたキリストの言葉を、自らの問題として徹底的に検証している。
プーチンによるウクライナ侵攻は政治、経済、軍事、心理(精神病理)の次元でいろいろと議論されているが、未だ宗教、文学の次元ではまったく掘り下げられていない。これからもトルストイの言葉を紹介していこうと思う。2022/03/11 06:15
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発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
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