『江古田文学』107号ドストエフスキー特集号刊行 

江古田文学』107号ドストエフスキー特集号刊行 

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ドストエフスキー特集を組むにあたって
ドストエフスキーとわたしと日大芸術学部清水正(「江古田文学」107号に所収)

 今年はドストエフスキー生誕二百周年、日大芸術学部創設百周年にあたる。これを記念してわたしは今年二月に編著『ドストエフスキー曼陀羅 松原寛&ドストエフスキー』、五月に『清水正ドストエフスキー論全集』第11巻をD文学研究会より刊行した。
 わたしが本格的にドストエフスキー論を書き始めたのは文芸学科に入学した一九六八年、『ドストエフスキー体験』を刊行したのが一九七〇年である。副手時代に同人誌「ドストエフスキー狂想曲」(全7冊)を刊行、助手・専任講師・助教授・教授時代にゼミ雑誌「ドストエフスキー研究」(全28冊)を刊行、「雑誌研究」の機関誌として「ドストエフスキー曼陀羅」(全9冊)を刊行した。
 一九八七年一月一日、D 文学研究会を発足、ドストエフスキーに関する著作を刊行し始める。機関誌として「Д文学通信」(一九九一年一月一日創刊)を刊行、ドストエフスキー宮沢賢治に関する批評を掲載する。最新刊は1430号(二〇一七年十一月三日)、総頁は7372頁となる。
 「江古田文学」編集長時代には12号(一九八七年五月)に「鼎談・ドストエフスキーの現在」(小沼文彦・江川卓清水正)を、20号(一九九一年六月)に「特集 ドストエフスキー」を組んだ。34号(一九九八年一月)から「『カラマーゾフの兄弟』を読む」を12回連載し、48号(二〇〇一年十月)で連載を中断する。
 その他「江古田文学」には「遠藤周作ドストエフスキー」(6回連載)、「朔太郎とドストエフスキー」、「ドストエフスキー派から見たチェーホフ」(座談会)、「団塊世代が読むドストエフスキー」(座談会)、「現在進行形のドストエフスキー」(対談)、「椎名麟三ドストエフスキー――椎名麟三の読む『白痴』『悪霊』『未成年』をめぐって」、「清水正VS中村文昭 〈ネジ式螺旋〉対談 ドストエフスキーin21世紀」、「動物で読み解く『罪と罰』の深層」(7回連載)などを掲載した。
 二〇一八年十一月九日、ロシア・サンクトペテルブルクドストエフスキー文学記念博物館で『清水正ドストエフスキー論全集』全10巻の寄贈式が行われ、ソコロワ山下聖美氏による「想像を超える現象としてのドストエフスキー――清水正の仕事――」が発表された。同年十一月十三日から三十日まで、日大芸術学部芸術資料館で「清水正ドストエフスキー論執筆50周年」を記念して「ドストエフスキー曼陀羅」展が開催された。 
 十九歳で『白痴』論を書いてから今年で五十三年目、わたしのドストエフスキー論は学生時代から教師時代まですべて日芸を根拠地としている。なんの因縁かはわからないが、半世紀に渡ってドストエフスキーを読み、講義し、批評し続けてきた。教え子たちも文芸学科の教授、講師、助教、助手となって研究と後進の指導に当たっている。ドストエフスキーと文芸学科は切り離せない深い関係を築き上げてきた。今回の特集を組むにあたっては教え子も含めすべて日芸関係者に依頼した。
 ドストエフスキーの文学は人類が消滅しない限り永遠の命を保っている。人間の神秘を解き明かそうとして五十九年の生涯を全うしたドストエフスキーの文学が滅びることはない。人間とは何か、神とは、永遠とは……これらの問題はわたしたち現代を生きる者達にとっても避けることのできない問題である。文学を志す者は、言葉によって神秘に立ち向かわなければならない。畢竟、神秘を解き明かすことはできないかもしれない。しかし、解き明かせない神秘と共にあることはできる。書き続けるとはそういうことである。日大芸術学部文芸学科が名実ともにドストエフスキー研究のメッカになることを期待している。(二〇二一年五月)


江古田文学ドストエフスキー特集・収録論考
清水正……「ドストエフスキー特集を組むにあたって――ドストエフスキーとわたしと日大芸術学部
ソコロワ山下聖美……サンクトペテルブルク~美しく、切ない、芸術の街~
齋藤真由香……理想の人生を降りても
高橋実里……子どもとしての存在――『カラマーゾフの兄弟』と宮沢賢治
伊藤景……ドストエフスキーとマンガ――手塚治虫版「罪と罰」を中心にして――
坂下将人……『悪霊』における「豆」
五十嵐綾野……寺山修司ドストエフスキー~星読みをそえて~
猫蔵……三島由紀夫ドストエフスキー~原罪

下原敏彦……「ドストエーフスキイ全作品を読む会」五十周年に想う

牛田あや美……ドストエフスキー文学の翻訳とメディア化

岩崎純一……ドストエフスキーニーチェ──対面なき協働者──

清水正……ソーニャの部屋ーーリザヴェータを巡ってーー

 

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清水正ドストエフスキー論全集

 

清水正の著作の購読申込、課題レポートなどは下記のメールにご連絡ください。
shimizumasashi20@gmail.com

清水正ドストエフスキー論全集』第11巻(D文学研究会A5判上製・501頁が出来上がりました。

購読希望者はメールshimizumasashi20@gmail.comで申し込むか、書店でお求めください。メールで申し込む場合は希望図書名・〒番号・住所・名前・電話番号を書いてください。送料と税は発行元が負担します。指定した振込銀行への振り込み連絡があり次第お送りします。

 

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定価3500円+税

 これを観ると清水正ドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。

https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk

六月一日から開催予定だった「清水正・批評の軌跡」展示会はコロナの影響で九月一日から9月24日までと変更となりました

 会期:2021年9月1日(水)~9月24日(金)

 会期中開館日:平日のみ。午前9時30分~午後4時30分(完全予約制)

 ※ご来場の際は事前に公式HP(https://sites.google.com/view/shimizumasashi-hihyounokiseki)にご確認ください。

九月一日から日大芸術学部芸術資料館に於いて清水正・批評の奇跡──ドストエフスキー生誕二〇〇周年記念に寄せて──』展示会が開催される。1969年から2021年まで五十余年にわたって書き継がれてきたドストエフスキー論、宮沢賢治論、舞踏論、マンガ論、映画論などの著作、掲載雑誌、紀要、Д文学通信などを展示する。著作は単著だけでも百冊を超える。完璧に近い著作目録の作業も進行中である。現在、文芸学科助手の伊藤景さんによって告知動画も発信されていますので、ぜひご覧になってください。