どうでもいいのだ──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載48)

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どうでもいいのだ
──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載48)


清水正


好生と志ん生


 好生はマンションの七階から飛び降り自殺してしまったが、殺しても生き返ってくるような強運の持ち主が古今亭志ん生であった。
 いつも彼をいじめている兄弟子を、今日こそは我慢がならねえ、ぶっ殺してやろうと思って出刃包丁を懐にしのばせて行くと、その日にかぎって気持ち悪いほどにやさしく接してくる。それでまあ、人を殺めずにすんでいる。満州でも、ロシア兵に銃剣で刺される寸前、その上官が召集命令を出し、急死に一生を得ている。
 また、関東大震災の折、志ん生が家に帰ってこないので、家族の者はみんな、被災にあって死んでしまったのではないかと覚悟をきめている。ところがどっこい、本人は、たいへんだこんな大地震では酒屋がだめになってしまうってんで、すぐに酒屋にかけつけ、親父に酒をくれ、親父は酒を売るどころの騒ぎじゃないから、すきなだけ持って行け、じゃあってんで志ん生、飲めるだけ飲んで、両手に一升瓶抱えて、店を出たはいいが、酔いつぶれて地べたに寝入ってしまう。
 こういった数々の破天荒なエピソードを持っている志ん生であるから、その咄も実に面白い。

師匠との関係がうまくいかない、腹が立ってビルの屋上から飛び降りたら、洗濯物のおしめに引っかかって命が助かったってんならシャレになる。が本当に死んでしまったのではどうしようもない。
 志ん生は人殺しもせず、殺されもせず、生き延びた。おそらく、誰にも打ち明けたこともないような秘密をも抱え込んで落語家していたんだろうな、と感じさせる。志ん生の顔には、にがみとすごみがある。地獄をくぐり抜けてきた雰囲気を身につけている。
 好生と志ん生を比べても仕方がないが、好生にはなにか哀れを誘うような弱さがある。師匠円生との葛藤、確執をギャグにして笑い飛ばしてしまうような業の深さと迫力がなければ、円生を越えることはできない。落語家に限らず、お笑い芸人は自殺しちゃいけない。もちろん死を内包していなくちゃだめだが、死を蹴飛ばす元気がなくちゃいけない。


 



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