小林リズムの紙のむだづかい(連載359)

清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


小林リズムの紙のむだづかい(連載359)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

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ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんがエッセイ本をリンダパブリッシャーズ(http://lindapublishers.com/ )から刊行することになりました。本のタイトルは『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった八日で辞めた話』発売日四月五日。


小林リズムの紙のむだづかい

【もらいものの幸せに気づいた話】



 
2歳年の離れた弟が、いま就活をしている。姉が就職に失敗した様子を知っているので、さほどプレッシャーは感じないらしい。もし私が大企業に内定をもらって、バリバリ働いていたとしたら弟も焦って、もう少し本気で就活をしたかもしれない。弟の就活に対するモチベーションは低い。受かりもしないような大企業を次々にエントリーし、案の定お祈りメールを受け取って「やっぱり社会人向ていないな」と確認する作業を繰り返している。それでもやっぱりヘコむのか、ここのところよく弟と電話をするようになった。

「やっぱさ、難しいよね。僕は結構、社会に適応できるタイプだと思うんだ。だからこのまま適当な会社に就職して、社会人になってずーっとそのまま生きていくのかなって思ったらさ、それはそれで嫌なんだよね。だけど、それもそれで幸せだとも思うんだよね」

という矛盾したことを繰り返しつぶやいている。弟の気持ちは少しわかった。自分にとっての「幸せ」が沢山あるから迷うのだ。たとえば、私たちはそれなりに幸せな家庭で育ったと思う。田舎にある小さな家で、お父さんが仕事帰りに買ってくるコンビニのアイスで喜ぶような。

もしお父さんが大手企業に勤めていたとしたら、休日にはバスローブを着て、ブランデーの香りをかぎながら、書斎でレコードを聴いていたら。それで円満な家庭だったら。私たちはそれと同じ環境が「幸せ」だと信じて、手に入れようと頑張ったかもしれない。書斎やレコードのない人生は負けだと思ったかもしれない。けれど、そうじゃなかった。そうじゃないけど、まあまあ幸せだった。だから、そうまでして手に入れる書斎やレコードにどんな価値があるのかとか、そういう生活こそが幸せだと思えないのだった。

「大手就職=勝ち組」「大手就職=幸せ」という発想もともとない。それが良いことなのかどうかは置いておいて、就活をするときには結構ネックになる。「大手企業に就職したい!」とも思えず、かといって「ここに就職したい!」と熱意を込めるような会社もないのだから。簡単にいえば「与えられた環境で満足する」という性分なのに、わざわざ苦労して就活をしなければいけない理由がわからない。

「まあどんな生き方を選ぶのも自由だけどさ。自分の気持ちへの答えは外側じゃなくて内側にあるからねぇ」
と、たいして就活もしなかったくせに私は偉そうに姉面する。大学生の頃の私もそうだった。持っているときって辛いのだ。自分が本当に就職したいのかもよくわからないのに「新卒切符」という期間限定のレアものを持たされたら、簡単には捨てられない。捨てたらいけない気がする。なんとしてでも有効活用をして「正社員」という立場を獲得しなければならない強迫観念に襲われる。「アルバイト?そんなのありえないし。人生の負け組でしょ?」という一般論を自分の価値観として結びつける。どんな生き方が正しいとか、間違いとか、わからないから信じられるものが一般論しかない。本当は正しさも間違いも誰も答えはわからないし、それこそが人生だと思うけど、これまで誰かがつくってきた道の後を歩いてきた生き方をしてきたから気づけない。

親や生活環境、今までもらっていた幸せは、すべて受け身のものだった。そんな状態で「自分にとっての幸せとは」なんて考えたって、なかなか答えは出ない。もらいものの幸せから脱皮して、幸せを自分でつくっていこうとするのが社会に出ることなのかもしれないなぁと、弟と話していて思った。




 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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