木暮享氏(竹久夢二伊香保記念館館長)が日芸・清水研究室を来訪。

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平成二十二年五月七日

四月三十日、伊香保に研究旅行した際に偶然の必然でお会いした木暮館長と意気投合し、通された茶室風の静謐な部屋で、林芙美子没後六十年を記念して「夢二記念館における林芙美子特別展示」の企画が実現に向けて動き出すことになった。それから一週間後の本日七日、メールで連絡しあいながら、午後一時に木暮館長がわたしの研究室を訪ねることになった。少し早めに着こうと思い、江古田駅には十二時半に着いた。改札を出て長い階段を降りようとすると何段か前を木暮館長が歩いていた。この日も不思議な偶然が続き、階段を降りてすぐに伊香保に同行した藤野君、大学の校舎に入ってすぐに一階のエレベータで五十嵐さん、三階のエレベータの扉が開くと、実習授業で「伊香保物語」(木暮館長に出会い、渋川駅のホームで虹の出た光景を見るまでのドラマ)を語って来た山下さんに出会った。研究室では来年の展示会に向けてより具体的な案が木暮館長より提示された。『浮雲』の各場面の絵の展示や、『浮雲』の内容を一時間程度で朗読できるように再構築することなど。その他、映画『浮雲』のポスター、林芙美子の初版本展示、講演会などさまざまなアイディアが提示された。いろいろお話を聴きながら、館長にはぜひ「竹久夢二林芙美子」について書いてもらいたいと思った。来年は山下聖美さんによる林芙美子特集が「江古田文学」で編まれることになる。夢二の生涯と作品が林芙美子のそれとどう重なるのか。まことに興味深い。トルストイの作品を読んで、それを一枚の絵に表現する夢二、どの場面も絵画的イメージにあふれている作品を書いた林芙美子。研究室で一時間以上も話した濃密な事柄を、今、ここですべて披露するわけにはいかない。
わたしは林芙美子の『浮雲』は日本の近代文学を代表する作品にとどまらず、世界文学の地平において見直され評価されなければならない作品と考えている。木暮館長に通された静謐な部屋で、わたしと館長はさらなる奥の部屋、魂の部屋へと参入し、そこで魂のキャッチボールをしたように感じた。研究室に入ってすぐに木暮館長はわたしがブログに連載している『浮雲』論を印刷したものを取り出し、熱く感想を述べられた。確かに魂のキャッチボールは開始され、何かが動きだしたのだ。今、わたしは静かにわくわくしている。
木暮館長を見送った後の授業では、予定を少し変更してわたしの「伊香保物語」を語った。


清水研究室で夢二の作品(コピー)を手にされる木暮館長

木暮館長と記念撮影

林芙美子浮雲』の初版本を手にされる木暮館長

日芸図書館の林芙美子展示の前で

日芸図書館の林芙美子展示の前で

偶然帰りぎわに出会った日芸の女性職員たちと山下聖美専任講師(左)
ダンディで素敵な紳士木暮氏と握手して林さんは上機嫌でした
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守衛室の前で記念撮影