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清水正・画
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有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)
随想 空即空(連載167)兵役拒否を巡って
『宣教師ニコライと明治日本』に次のような文章がある。
「姉崎〔正治〕氏の雑誌にわが国のレフ・トルストイの書いた戦争に関する論文が英語で載っていて、読んだ。いうまでもなく、戦争はあってはならぬと論じ、いまの戦争に激しく怒り、ロシアを口ぎたなくののしっている。ユートピアだ。かれは宗教の基礎の上に全生活形態を打ち建てたいと望んでいながら、宗教そのものからその基礎を取り外してしまったのだ。なぜなら汎神論の上に宗教を建てることはできないのだから。それは波の上に家を建てようとするようなものだ。いや、それよりもわるい。波の上なら筏くらいは組むことはできるが、頭で考えただけの、わけのわからない、無にも等しいものの上には、何一つ作ることはできない」(一九〇四年九月一一日)(167)
この文章は『ニコライの日記』(岩波文庫)には収録されていないが、ニコライ主教のキリスト教観を知る上では重要である。ニコライ主教はトルストイの非戦論を非現実的な幻想〈ユートピア〉と見なしていたのだろうか。非戦論や絶対平和主義の立場に立たなければ当然、兵役拒否の思想は生まれない。ここが不思議なところである。キリスト教においては〈汝の敵を愛せ〉〈殺すなかれ〉は基本中の基本の教えなのでないか。なのになぜニコライ主教の内に非戦論や兵役拒否の考えが強く芽生えなかったのか、それが不思議なのである。
ニコライ主教は「神に祈りて爾等の皇軍に勝利を賜はんことを求めよ。凡そ愛国の促す所は一切之を尽せ。蓋愛国心は心情の聖なる者なり」と書いた後に「然れども地上の郷国の外、我等には亦天の郷国あり、民族の種別に由らずして衆斉しく之に属す」と続けている。ニコライ主教にあってはロシア人も日本人の信徒も各の祖国のために血を流して戦っても、共に〈天の郷国〉がある限り、それによって救われるのだということである。もし彼がなんの迷いもなくこのことを信じているのなら、非戦論や兵役拒否にこだわる必要はないだろう。その意味では彼は鑑三の矛盾に苦しむこともなかったであろう。
ニコライ主教は危険な日本にとどまったが、暗殺されてもおかしくない情勢にあったことは間違いない。日本の国家はキリスト教弾圧の方針をとらず、国際的な批判非難を巧妙に回避したと言える。日本国家はニコライ主教の身辺警護を徹底したが、これに対しニコライ主教は〈神に祈りて爾等の皇軍に勝利を賜はんことを求めよ〉という言葉で応えている。ニコライ主教のこの基本的な方策は日本国家の方針に迎合するものであり、あやうい地点でバランスを保っている。もし仮にニコライ主教が鑑三やトルストイと同じく非戦論を唱えでもしたら、事情は全く違っていたに違いない。ニコライ主教はすぐれた教会統括者であり実務家であり、政治的平衡感覚を備えた者でもあったことは注目に値しよう。
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