星エリナのほろよいハイボール(連載90)

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星エリナのほろよいハイボール(連載90)

お葬式を思い出す
星エリナ

 
 7月7日。たなばた。私は5限目の授業が終わった途端に教室を出て走り出した。来るときはパラパラと降っていた雨も止んでいる。よし。江古田駅まで走る。乗り換えを確認する。地下鉄への乗り換え時間は3分。電車のドアが開いた瞬間またダッシュ
 こうして私は友人が出ている舞台のために急いだ。ちなみに地下鉄への乗り換えは失敗した。
 18:30開演の舞台だが、18:30に最寄り駅に到着した。間に合っていないけど、できるだけはやく行こう、とまたしてもダッシュ。駅から近い場所だったので、2分で到着。スタッフの方が案内してくださって、椅子の上にあるチラシを取って座る。携帯電話をマナーモードにしてしまったところで照明が落ちた。はじまっていたと思っていた舞台ははじまってなかった! ぎりぎりセーフだったようだ。
 私が見た回が千秋楽。舞台は二年後には解体されてしまうぼろアパートで繰り広げられる。売れない芸人とガリベン学生が入居していて、そこに新しい隣人がやってくる。売れない芸人たちの恋愛だったり、地元宮城県の震災復興などがメイン。また、隣人の奥さんが倒れ、亡くなってしまった後、前を向いて進めなくなってしまった旦那さんとその後輩のストーリーなどがとても面白かった。
 主人公がお笑い芸人なので本当に笑ってしまう面白いシーンは多かったけれど、どちらかというと涙のほうが多く出た。舞台は東日本大震災から三ヵ月後。主人公と相方の高校の同級生が、遺体で見つかり、相方が地元で通夜に出る。それから帰ってきた相方は、お笑いをやめ、地元で復興活動をすることを決意。相方が震えた声で通夜の様子を伝えるシーンに涙が出た。というのも、私も福島でお葬式に出たことがある。親戚や近所に住んでた人がみんな集まった。その時のことを思い出してしまい、涙が止まらなくなった。
 また、奥さんが亡くなってしまった悲しみで部屋から出てこなくなった旦那さんに「もっと自分を頼ってください」とドア越しに叫ぶ後輩に涙が出た。自分にできることっていったら、えっと、あんまりないけど、飲みに行けます。いつでも行きます。いつまででも飲みましょう。と、叫ぶ後輩の演技は素晴らしかった。私も「もっと私のこと頼ってください、先輩!」と大学2年生のときは思っていた。その後、先輩方は「星ちゃんがいてくれてよかった。頼ってたよ」と笑ってくださった。その時のことを思い出してまた泣いた。
 アパートの大家さんが、最後に締めくくるような台詞を言う。前に向かって歩くことは難しいよね。先輩の女芸人が途中で後輩女芸人に言う台詞も印象に残っている。やめんのは簡単なんだよ。続けることのほうが難しいんだよ。「女のピン芸人なめんなよ!」っていう台詞は笑いも起きたけれど、その役の本質でもあるな、と思った。この道化の役として重要な女芸人。最後の挨拶のときの笑顔はステキだった。
 10年の芸暦を持つ女芸人の役。だからこそつらそうな表情のシーンもありつつ、笑顔の多い役だった。化粧も服装も派手な道化だったけれど、ちょっと格好良いと思ってしまった。

 

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