小林リズムの紙のむだづかい(連載70)

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紙のむだづかい(連載70)

小林リズム

姉弟合コン、はじめました 後編】


 弟を含めた男の子たちは、私たちが年上ということもあって、気を遣っている感があふれ出てる。あまりにも盛り上がらない状況で、ひねり出したように
「サトルくんとマナミさんはどこで知り合ったんですか?」
と聞かれて、前もって決めてあった設定を言う。「こっち(東京)で出会ったんだけど、実は地元が一緒っていうことがわかって…」とナチュラルに説明する。けれど、あまりにも話題がないせいで、質問を掘り起こされてしまう。
「へぇ…東京のどこで出会ったんですか?」
「えっと…道端で?」
「うわ、ナンパっすか!サトル、やりますねぇ」
素朴な我が弟がナンパとは…。サトルくん、心底嫌そうな顔をして「違う違う!そっちが道に迷ってて俺が教えてあげたんだよ」と全力で否定。
「えー、じゃあ逆ナン?」
設定とはいえ、弟なんかを逆ナンするなんて嫌すぎる。
「いや、あたしが道で立ってたらそっちから…」
もう、わけがわからない。そして、沈黙。沈黙。沈黙。
 気まずすぎる状況のなかで、早々とネタ晴らしをしようと決めた。
「もうさ、いいよね、言おうよ、あたしとサトルくんの関係性!」と叫んだら、「え、なに?」という雰囲気になった。「どういう関係だと思う?」とバリバリの営業っ子ちゃんに振ると「え〜、もしかして〜、これ?」と手でハートマークをつくる。だめだ、無理がある。
「実は姉弟です!」
え、うそ、まじで?姉と弟で合コンやってるの?え、なにそれ?聞いてない!でも言われてみれば鼻が似てるかも。と、ちょっとだけ盛り上がった。
「いつもよりあんた気合い入れてるよね」
と弟に言うと、弟も負けじと
「人の家に土足であがりこんでくるくらいの酒乱だよね」
と言い返してくる。こんな合コンで実る出会いがあるなら教えてほしい。
 姉弟だとカミングアウトをしたことで空気は変わったものの、なんせ、モリアガラナイ。そういうときはとりあえず飲むしかない。華やかお嬢さんが教えてくれた「菜の花、らっかせい、ディズニーランド」をひたすらエンドレスに繰り返すという千葉飲みコールを投げやりにやり、お開きになったのだった。当然二次会もない。

 「ちょっと失敗だったよね」「もっとうまくやればよかったね」「そっちがしゃべらないんじゃん」「だって、どうやって接すればいいかわからないし」「もっとさぁ、楽しませるとか考えてよ」「だって仮にも年上だしさぁ」と、家に帰って弟と電話で話しながら反省会をしたのは言うまでもないのだった。