随想 空即空(連載169)汎神論とキリスト教の問題

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随想 空即空(連載169)汎神論とキリスト教の問題

清水正  

 ステパンはヨーロッパに留学したリベラリストで彼の話す言語はロシア語とフランス語のチャンポンのようなもので、謂わば彼の思想もロシアとヨーロッパのそれを中途半端に取り入れた斑模様状態にあった。ステパンはリベラリストを自認しており、性的にも自由であった。彼は最初の結婚の時、外国で妻の他にポーランドの青年と同棲していた。ドストエフスキーは作品中で性的場面を直接的具体的に描写することはなかったが、想像力を駆使すればテキスト深層に性的場面は豊かに埋め込まれている。ステパンは妻ばかりでなくポーランド人の青年とも性的関係を結んでいたこと、妻もまたステパンばかりでなくポーランド青年と性的関係を結んでいたことは間違いない。そこで問題になるのがステパンの息子とされているピョートルである。ドストエフスキーは作中でピョートル・ステパノヴィチと名と父称で書くことで、読者にピョートルがステパンの息子であることを強調している。ドストエフスキーの作品にあってはこういった強調は読者に対する一種の特別な信号と受け止めた方がいい。ステパンはもしかしたら生まれてくる子供はポーランド青年の子なのではないかと激しい疑心暗鬼にかられ、結局、ピョートルをО県の伯母の元へと送ってしまうのである。

 ドストエフスキーはピョートルが伯母のところでどのように育てられたのかを描いていないが、生まれてすぐに〈父親〉に捨てられた彼が、ステパンの表向きの思想などに誑かされない青年に育ったことだけは間違いない。ピョートルの虚無思想はニコライ・スタヴローギンのそれをはるかに超えて本物なのである。ピョートルは口から赤い舌をだしながら、流暢にビーズ玉をころがすように言葉をまき散らす。この〈赤い舌〉の正体を見抜いている作中人物はいない。ニコライ・スタヴローギンの猿を演じ尽くして、ただ一人、血にまみれたスクヴォレーシニキを無傷で去っていったのがピョートルである。

 ステパンはゲーテのような古代異教徒的汎神論者として振る舞いながらも、決してキリスト教から完璧に離れていたわけではない。彼の精神は分裂しているが、しかしその分裂を明晰に認識していたとは言えない。ステパンの言説は無神論者のそれと見なされたりするが、しかし彼は社会主義や革命思想をキリストの代わりに押し出すことはできないとも言っている。ステパンは家出を決行し、無意識のうちに〈キリスト〉を目指すが、ウスチェヴォ村(湖の畔)で病にかかり、彼を追ってきたワルワーラに看取られて息を引き取る。ドストエフスキーがステパンに託した汎神論とキリスト教の問題はついに決着のつかないまま幕が下ろされた。

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