「清水正・批評の軌跡──ドストエフスキー生誕200周年に寄せて」展示会

 清水正・批評の軌跡──ドストエフスキー生誕200周年に寄せて」展示会
日本大学芸術学部文芸学科主催
 今回は主任教授の挨拶の前半部分を紹介しておきます。

~2021年〈清水正の宇宙〉の旅へ~

日本大学芸術学部文芸学科 主任 ソコロワ山下聖美

 2021年はドストエフスキー生誕200年のメモリアルイヤーです。この記念すべき年に、文芸学科では「清水正・批評の軌跡ードストエフスキー生誕200周年に寄せてー」展を開催する運びとなりました。

 文芸批評家であり、日芸文芸学科の元教授・清水正先生は、50年以上もの間、ドストエフスキーの作品と共に執筆生活を歩み続けておられます。批評の対象領域は、ドストエフスキーを軸として、宮沢賢治林芙美子などの様々な近代文学作家、マンガ作品などと、誠に幅広く、最近ではyoutube番組をも批評の対象とし、まさに縦横無尽、型にとらわれない〈清水正の宇宙〉を言葉によって築き上げてこられています。

 展示では、清水先生の批評の軌跡を明らかにし、無数の言葉の深みに触れていただきます。文学とは? 芸術とは? ものを書くとは? 生きるとは? 神とは? これらの問いに向かって、ときに魂から紡ぎ出され、ときに広大なスケールの理論を伴って生み出される言葉の数々から、清水先生の情熱に満ちたドストエフスキーの授業を思い出す方も多いのではないでしょうか。

 文芸学科で長きに渡り教鞭をとられた清水先生の存在により、文芸学科とドストエフスキーは切っても切り離せない関係となっております。日本近代文学の作家たちがドストエフスキーを中心とするロシア文学の影響を強く受けたように、文芸学科の学生もまた、意識的に、または無意識のうちにドストエフスキーを感じとり、提示された問題に向き合っているのではないでしょうか。ドストエフスキーの言葉は時を経、国を越えて、すべての〈考える青年たち〉の思考を刺激して止みません。