清水正の『浮雲』放浪記(連載127)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正の講義がユーチューブで見れます。是非ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=LnXi3pv3oh4
批評家清水正の『ドストエフスキー論全集』完遂に向けて

清水正VS中村文昭〈ネジ式螺旋〉対談 ドストエフスキーin21世紀(全12回)。
ドストエフスキートルストイチェーホフ宮沢賢治暗黒舞踏、キリスト、母性などを巡って詩人と批評家が縦横無尽に語り尽くした世紀の対談。
https://www.youtube.com/watch?v=LnXi3pv3oh4


https://youtu.be/KqOcdfu3ldI ドストエフスキーの『罪と罰
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp 『ドラえもん』とつげ義春の『チーコ』
https://youtu.be/s1FZuQ_1-v4 畑中純の魅力
https://www.youtube.com/watch?v=GdMbou5qjf4罪と罰』とペテルブルク(1)

https://www.youtube.com/watch?v=29HLtkMxsuU 『罪と罰』とペテルブルク(2)
清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』清水正への原稿・講演依頼は  http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

デヴィ夫人のブログで取り上げられています。ぜひご覧ください。
http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-12055568875.html

清水正研究室」のブログで林芙美子の作品批評に関しては[林芙美子の文学(連載170)林芙美子の『浮雲』について(168)]までを発表してあるが、その後に執筆したものを「清水正の『浮雲』放浪記」として本ブログで連載することにした。〈放浪記〉としたことでかなり自由に書けることがいいと思っている。



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 清水正の『浮雲』放浪記(連載127)
平成◎年3月5日
 
 もう暮近いころで、余の小さな部屋の窓からは、そこに並べた植木鉢の緑を通して、落日の斜めな光線が太い束になって流れ込み、余に明るい光を浴びせていた。余は過ぎ去った夢を呼び返そうとあせるように、急いでまた両眼を閉じた。けれど、不意に、さんさんたる日光の中から、何かしら小さな一点が浮き出すのを見つけた。この点は不意に何かの形になって行き、突然まざまざと小さな赤い蜘蛛が余の眼前に現われた。余は忽然と思い起こした、それは同じように落日の光線がさんさんとそそいでいるとき、銭葵の葉の上に止まっていたものだ。余は何ものかが、ぐさと体を刺し貫いたような気がして、身を起こしてベッドの上にすわった……(これがそのとき生じたことの全部である!)(米川正夫訳『悪霊』岩波文庫下巻193〜194)

 ここに引用したのは、ニコライ・スタヴローギンがドイツの小さな田舎町の旅館で〈黄金時代の夢〉を見た後の描写である。なぜ、この場面をわざわざ引用したかと言えば、「雨の窓を見ていると、外の緑が濡れて霧を噴いているように見えた。一種の神秘な緑の光線が、ぐっと部屋の中にまで浸み込んで来る」という『浮雲』の描写にインパクトがあったからである。かつて坂口安吾の『吹雪物語』と『悪霊』の関係について書いたときにも、この場面が妙に印象に残った。