小林リズムの紙のむだづかい(連載210)

小林リズムの紙のむだづかい(連載210)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。
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四六判並製160頁 定価1200円+税

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ドラえもん』の凄さがわかります。
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清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/


小林リズムの紙のむだづかい(連載210)
小林リズム
 【正解もマニュアルもないから】
   
「あたしさぁ、わかったんだよね」
ハイボールのジョッキについた水滴を指でもてあそんだり、おしぼりで拭いたりする。頭のなかが変にハイテンションになっていく自分をどこかで自覚しながら、目の前にいる祖母に伝えたことがあった。
「今まで弱みとか、傷ついたこととか、言われたキツい言葉も、されたことも、お母さんに話せなかったのは、お母さんがあたし以上に傷つくって知ってたからなんだなぁって」
祖母も同じようにとろんとした目で見つめ返してくる。きっとかなり酔っ払っているだろうから、今日のことは話しても忘れてしまうだろうなと思った。そう思ったら、不思議なくらいにつらつらと言葉が溢れてくる。

「自分の身に降りかかった苦しい出来事をさ、話すでしょう?そうするとお母さんはあたしよりも落ち込んで悲しんじゃうの。それが嫌だった。自分が一番悲しみたいときに自分よりも悲しまれたら、もう自分のために悲しむことができないんだよ。
あたしはどーんと構えて“そんなことくらいで何いってるの!しゃきっとしなさい!”って叱ってほしかったんだと思う」

 いつだったか、母がわたしに“みんながりっちゃんみたいに強いわけじゃないんだから”と言ったことがあった。わたしはその言葉に“確かに強いよ。でもお母さんは弱すぎる”と返した。そしてその言葉は今でも間違っていなかったと思う。母は弱い。その弱さにわたしは何度も苛ついたし、ずるいと思った。傷ついたほうが優位に立てる気がして、弱さを露呈できるほうが偉い気がして、納得がいかなかった。自分は弱さをみせないように振る舞い、心配させないようにして頼らずにいるのに、どうして冷たいなどと言われないといけないんだろう。そう思ってた。

「でもね、そうやって強くいられたのも、自分以上に傷つくお母さんがいたからなんだよね。なんか矛盾してるけどさ」

ぽろっと出てきた自分の言葉に自分で驚く。祖母をみると、ほとんど焦点が定まらない目で相槌を打っている。酔っ払っているなぁと思った。祖母が今何を考えているのかわからないように、母の本当の気持ちもわからない。人の気持ちを汲むことができないわたしは、自分自身の気持ちにさえ鈍感で気づかないこともある。わからないことだらけなのだ。母のことも、自分のことも。
 少しだけ残ったハイボールをぐっと傾けて飲み干し、おかわりを頼んだ。祖母が横で「でもよかったわぁ。ふたりともこんなふうに成長して」と小さな声で言ったのを聞いた、ような気がした。

 

小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/

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