小林リズムの紙のむだづかい(連載76)

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紙のむだづかい(連載76)
小林リズム

【就活しない 後編】

 特にやりたいこともなかったので、「条件がいいところ」それから「面接回数が少ないところ」というのが理由で不動産関係の会社を受けたら、あっけなく内定をもらった。もらってみると今度は欲が出てきて、もうちょっと条件がいいところ…なんて思って受けたのが、あの教祖会社だった。3回くらいある予定だった面接は運よく(じゃなくて、ものすごく運悪く)気に入られて1回で終了し、面接をしながらロールケーキを食べて経営者の話を聞いた。
 ツバをたくさん飛ばされながら「モテるには口の横にご飯粒をつけておけばいい」という話を真剣にされ、「お前さんはたくさん稼ぐようになる」とおだてられ調子に乗ったあのときから、すでに怪しい会社だと気付いていればよかった…とはもう今さら思うのすら面倒くさい。

 「世間を知らない女子大生が、ブラック企業に騙されて就職」
というキャッチでもつければ、なんてかわいそうなの…って同情されるのか、それともバカだよなぁと笑ってくれるのか。本当のところは「自分はそういう会社に就かなくてよかった!」と安堵を感じるパターンが一番多いかもしれない。そういう意味で、私は奇跡的なくらい運が悪かったと思う。だけどもし1年前に戻れるとしても、きっと就活をしないと思う。もとから集団行動が得意でないし、場の空気も読めないしで痛々しい思いしかしていない。

 たとえば、グループディスカッションでのタイムキーパー役も時間が過ぎてから「あーごめん、しくったわ。申し訳ない」という軽さでは済まないし、「書記やります!」と立候補しておきながら、汚い字で同じグループの人からやり直しを命じられたりもした。「芸術学部なので芸術的な字なんですよー」とジョークをかましても「え、なんなのこの子、マジないんだけど」みたいな扱いになるし、本当に居心地が悪かった。

 というわけで“どこかの会社で正社員になること”にこだわりすぎて失敗したのだけど、正社員になれないからって人生終わったわけじゃないんだなと今さら気付いた。手に入れたものが想像していたものと全然違ったりもするし、ようやく掴んだものでも味気なく思える日がくるかもしれないし、積み重ねていたものがちょっとしたことで崩れ落ちたりもするし。じゃあ何ができるのかっていうとまさに「今でしょ!」なアレで、現段階で目の前にある現実を受け入れて選択することくらいで、選択したことに責任を持つことくらいで、自分でこの道を選んだって自覚することだと思う。人や環境のせいにしない。
 …さて、もう一度よく考えてみてください。どうでしょう“責任持った無職”ってちょっとアウトローでかっこよくないですか。え、そんなことないですか、ハイ、すみません。