星エリナのほろよいハイボール(連載107)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。




ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp


清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。

星エリナのほろよいハイボール(連載107)

海を見る
星エリナ


 
 伊豆旅行二日目の朝は思っていたよりすっきりしていた。前日の夜に部屋でお酒を飲みながらドラマを見て、出演者の俳優についてあーだこーだ語り合って寝た。その時は、ちょっと明日頭痛くなりそう、とか思っていたのだけれど、七時に二人とも起きていた。大あくびをしながらも二人で歩いて温泉まで向かった。朝から温泉に入れる贅沢。草津旅行のときは草津に住みたいと思ったけど、今回は伊豆に住みたいと思った。単純な思考回路である。
 ホテルをチェックアウトすると、電車で二つ隣の駅、城ヶ崎海岸を目指した。二駅で330円。ちょっと高めだな、と思っていたが、やはり1つ1つの駅の間が長い。二駅の間に山を越えている。城ヶ崎海岸駅はなんだか新しくてきれいだった。足湯もあって、駅舎の二階にはガラス工房もあった。私は同行者とともに歩き続け、駅名にもなっている城ヶ崎海岸を目指した。
 20分くらい歩いただろうか。別荘地をずっと歩き、緑が心地よい。途中看板が出ていたベーカリーに寄ったらCLOSEだったのがショックだったけど、無事に目的地に着く。
 城ヶ崎海岸の門脇つり橋である。正直高いところが苦手な私は一刻も早く渡りきりたかったのだけれど、やっぱり記念撮影はしたかったので少し立ち止まる。写真を撮っている間に子どもがつり橋を走っていって揺れ、私は生きた心地がしなかった。だって高さは23メートル。ざざーっと波がつり橋の下をせわしなく寄せては返してる。しかもしかも長さは48メートル。はやく渡ってしまいたいんだけど、長い!
 ようやく渡りきると、そこには絶景が待っていた。青い海。青い空。白い雲。夏ではないから風が少し冷たいけれど、地平線を見ていると時間が永遠のように感じた。私たちは岩がごちゃごちゃの歩きにくい足場をなんとか歩いていき、海へと近づく。どんどんどんどん近づいて気がつく。そうだ、ここは高さ23メートル……。どこまでいけるのか、と思っていると、なんと柵がなく、リアルに断崖絶壁を体験できる。崖っぷちまで二メートルくらいまで近づき、私たちは腰をおろした。そこからゆっくり這って下を覗く。ひゅんっと嫌な汗が流れて私はすぐに戻った。こんなに気軽に断崖絶壁スリルを味わえちゃっていいのだろうか。すると、後ろからおじさんがゆっくり歩いてきた。どうやらご夫婦で観光のようだ。
「もうやめて! そこにいて!」
 大きな声を出したのは奥さん。大きなカメラを抱えている。旦那さんがどんどん海へ近づいていってしまうから心配になったようだ。それでも進む旦那さん。
「大丈夫。大丈夫ー」
 ご本人は大丈夫なようだけれど、こちらとしてもひやひや。落っこちないでくださいよー、と同行者とともに呟く。
 それにしても本当にみんな落ちないんでしょうか。下を覗くと海の色はすごくきれいだった。エメラルドというか、ブルーというか。波が岩にあたって蒼が白くなるのも、全部見ていると吸い込まれそうになる。ぽとり、と落っこちてしまいたくならないのだろうか。そんなことを考えながら帰ろうとしていたら、白い看板がぶらさがっているのを発見した。しかし、ちょっと木の影にあって、汚くなっているから目立たない。なんだろう、と思い読んでみる。
『相談しよう、いのちの電話
 そこには三箇所ほど警察署や相談所の電話番号が載っている。やっぱり、自殺しようとする人はたくさんいるようだ。

 

※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。