随想 空即空(連載41) #ドストエフスキー&清水正ブログ# 清水正

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随想 空即空(連載41) #ドストエフスキー清水正ブログ#

清水正

 『銀河鉄道の夜』には様々な謎が仕掛けられている。ジョバンニは父の帰りをひたすら待っている勤労少年の如くに描かれているが、実は父殺し願望を潜めた少年であり、いじめっ子のザネリはその秘密を握っていた少年で、彼はジョバンニの分身でもあった。しかしジョバンニ自身は自分の深層に父殺し願望が潜んでいることなどまったく自覚せず、ザネリがいつも自分をばかにする理由を認識することはできなかった。ジョバンニが街灯の灯りを利用して機関車ごっこをする場面は、父を殺した少年ジョバンニが〈父〉(機関車)に成り代わって演じる恐るべき場面であるが、ジョバンニはもとより読者もまたそのことに気づかなかった。『銀河鉄道の夜』に限らず、宮沢賢治の童話の大半はその秘められた数々の謎が解明されないままに素朴な読み方がされてきた。わたしは四十歳から五十歳にいたる十年間にわたって、文字通り毎日、賢治童話を批評し続けたが、天才賢治の〈一人遊び〉につきあっていたようなものである。

 さて、ここで内村鑑三の「愛する者の死せし時」に関連して、宮沢賢治の場合を考えてみよう。賢治は『銀河鉄道の夜』においてはカムパネルラが突然姿を消した後のジョバンニを次のように描いている「ジョバンニはまるで鉄砲玉のやうに立ちあがりました。そして誰にも聞えないやうに窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったやうに思ひました」と。賢治は〈愛する者〉トシが亡くなった後の悲しみを「いかりのにがさまた青さ/四月の気層のひかりの底を/唾し はぎしりゆききする/おれはひとりの修羅なのだ/ まことのことばはうしなわれ/雲はちぎれてそらをとぶ/ああかがやきの四月の底を/はぎしり燃えてゆききする/おれはひとりの修羅なのだ」(「春と修羅」)と詩っている。

 わが子文也を亡くした中原中也は「春日狂想」で「愛するものが死んだ時には、/自殺しなけあなりません。/ 愛するものが死んだ時には、/それより他に、方法がない。/ けれどもそれでも、業が深くて、/なほもながらふことともったら、/ 奉仕の気持に、なることなんです。/奉仕の気持に、なることなんです。/ 愛するものは、死んだのですから、/たしかにそれは、死んだのですから、/ もはやどうにも、ならぬのですから、/そのもののために、そのもののために、/ 奉仕の気持に、ならなけあならない。/奉仕の気持に、ならなけあならない。」と詩っている。

 わたしは『銀河鉄道の夜』をドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に関連付けて批評したが、当時最も関心のあったのは息子イリューシャを亡くした父親スネギリョフの残された者の悲しみであった。狂気に陥るか、それとも自殺して果てるか――スネギリョフの悲しみは何によっても慰められることはない。確かに、信仰によってさえ慰められぬ悲しみがある。わたしは当時、授業でスネギリョフの悲しみを巨大な流氷の発する静かな音に例えて口にしたことがある。たまたまわたしはNHKの番組で流氷の発する、静かで透明な音を聴いて、大いなる悲しみは、大げさに嘆いたり、喚いたり、叫んだりするものとは違うことを実感した。巨大な固まりである流氷の発する透明感あふれる〈音〉が、わたし自身の〈残された者〉の悲しみと静かに重なったのである。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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