随想 空即空(連載37) #ドストエフスキー&清水正ブログ# 清水正 内村鑑三と正宗白鳥──信仰をめぐって──

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清水正

 

内村鑑三正宗白鳥──信仰をめぐって──

 白鳥は鑑三について「氏はバンヤンやダンテにも劣らないような、死の恐怖生の恐怖に迫られて神を求めているのである」と書いている。ひとは何故に神を求めるのか。白鳥はその原因の一つに〈死の恐怖〉があることを指摘する。これは白鳥の洗礼と棄教を考える上でも見逃せない事実である。白鳥は「現代つれづれ草」(新潮社版・正宗白鳥全集第十一巻)の中で次のように書いている。

 

 私は幼い頃、祖母に育てられたので、祖母の口から、来世の恐怖現世の恐怖を教えられた。それは柔かい頭脳に刻み込まれている。八寒地獄血の池針の山などが、死のかなたに存在して、自分を待っているように思われたりした。ところが、長い間の人生経験学問修行をして来た今日の私が、祖母から受けついだ来世観から脱却していないのを感じている。文字通り言葉通りに感じているのを如何ともし難いのである。青年時代に神田の青年会館で内村鑑三先生からダンテに関する講演を聴いたことがあったが、先生は、ダンテの「神聖喜曲」地獄篇をケリーの英訳に依って、日に一回づゝ熟読したことを熱演された。そして、その地獄のもろもろの光景の恐ろしさに戦慄して、三十三夜殆んど眠れないほどで、家人を心配させたと述懐された。その恐怖から脱却するためのキリスト信仰であり、キリストに縋って、この永遠の恐怖から救済されたと云うのが、内村先生の信仰経路の心核なのである。

  私もそのつもりで、ダンテを読んだ。地獄篇を読んだ。どんなに恐ろしい思いをさゝれるのかと予想しながら読んだのだが、私に取っては、少しも恐ろしくなかった。一章々々が面白いばかりであった。それよりも、幼時に祖母から教えられた地獄ばなしが、恐怖感を伴って、いつまでも私の頭から払拭されないのである。

  私は夜半暗闇のなかに目醒めた時に、或は、暁の光に目を開いた時に、忘れていた大切な事を思出す如くに、をりをり祖母伝授の、来世の地獄話を思出すのである。(338~339)

 

 三つ子の魂百までと云われるように、幼年期の体験はその人の一生を支配する。白鳥にとって祖母から教えられた〈八寒地獄血の池針の山〉の生々しい地獄図は幼い頭脳に刻印され、生涯そこから逃れられないトラウマとなった。こういったトラウマは後に身につけた自然科学的な思考、合理的な思考によっても克服することができない。ひとは何故にキリスト教に救いを求めるのか。キリスト教信徒でない者にとってこれは大いなる疑問であるが、鑑三や白鳥にとって〈死の恐怖〉が大きな要因になっていたことは確かなようである。

 鑑三には〈罪の意識〉も根深くあったようだが、白鳥においてはまず何よりも〈死の恐怖〉から救われたいという気持ちが強く働いたようである。わたしの場合、幼年期に仏教的な地獄観など一度も聞かされたことはないので、死後の地獄など微塵のリアリティも持っていない。地獄も天国も教えを説く上での方便と思っているので、そういう教義に洗脳されるようなことはない。鑑三や白鳥のような時代を代表するような知識人が、こういった死の恐怖や罪意識に苦しんでいること自体が不思議である。幼児期に刻印されたトラウマと宗教的洗脳の恐ろしさを改めて感じるばかりである。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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