随想 空即空(連載29) #ドストエフスキー&清水正ブログ# 清水正

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随想 空即空(連載29) #ドストエフスキー清水正ブログ#

清水正

 

 義雄の〈宇宙の帝王〉と泡鳴の唱える〈日本主義〉との関係はきちんと検証する必要があろう。なにしろ泡鳴は〈南無阿弥陀仏〉〈耶蘇教の神〉をも視野に入れての〈宇宙の帝王〉〈宇宙その物〉ということであるから、彼の〈日本主義〉を狭隘な次元で論ずることはできない。泡鳴にあっては仏教の〈仏〉も耶蘇教の〈神〉も絶対ではない。それでは〈宇宙の帝王〉はどうなのか。この宇宙の〈帝王〉は仏教の〈仏〉も、耶蘇教の〈神〉をも包摂する絶対者なのか。それとも〈仏〉や耶蘇教の〈神〉と同様に相対化されるものなのか。相対化された〈絶対〉など、もはや唯一絶対としての権威を保持することはできない。〈仏〉〈神〉〈帝王〉の三者が自らの絶対性の相対化を拒めば、三者は自らの絶対性を保持するために妥協のない戦いを回避することが出来なくなる。泡鳴の日本主義は個人主義国家主義であり、それは征服愛を標榜しているから壮絶な戦いを回避するよりは積極的に征服戦争に突き進んでいくことになる。今日の平和主義者などは気絶してしまいそうな勇猛果敢な日本主義の主張であるが、非戦論や平和論などを大まじめに唱えるトルストイを〈空想的世界主義者、空想的人類主義者〉の一言で片づけ、「戦争も亦生活経営」と断言する泡鳴の現実(現世)に根ざしたこの思想を〈空想的次元〉で非難しても何の効力もない。

 泡鳴の「日本主義」を読む限り、〈日本主義=個人主義国家主義〉を相対化する視点はない。〈宇宙の帝王〉〈宇宙その物〉を自己と同一化して疑わない義雄を作品の主人公にするだけのことはあって、阿弥陀仏や耶蘇教の神を前にしても微塵もたじろぐことはない。

 泡鳴は若い頃にキリスト教の洗礼を受けているが後に棄教している。棄教した泡鳴が内村鑑三と対談したらどういったことになるのか興味津々である。青年期の洗礼と後の棄教という点で泡鳴は白鳥と体験を同じくするが、彼らの対談においてキリスト教信仰に関する立ち入った議論は見られない。どういう理由で洗礼を受け、どういう理由で棄教するに至ったのか。お互いに心の底をさらけ出して対談しなければ、こういった点は第三者に明確に伝わらない。

 キリスト教の神に対する不信と懐疑があったとすれば、それはヨブの魂の震えをもってのそれでなければなるまい。わたしは内村鑑三の『ヨブ記講演』を読んで鑑三の並々ならぬ苦悶と懐疑を読みとった。鑑三の不信と懐疑は彼自らの言葉として表出されてはいないが、それはヨブの悶えと叫びの言葉に限りなく寄り添うかたちで表出されている。鑑三の〈信仰〉には白鳥や泡鳴の〈不信と懐疑〉を呑み込むほどの深い魂の苦悶と叫びが潜んでいる。青年期に内村鑑三の講演や著作に心酔した白鳥は、自らの不信と懐疑を鑑三の著作に肉薄して語るべきであったろう。真っ正面から信仰に向き合った鑑三に対して通り一遍の言辞を弄して通り過ぎることはできないはずである。白鳥が小林秀雄との対談の後に、彼にしては比較的長い「内村鑑三」を書いたことは、彼なりに鑑三に対して一つの魂上の決着をはかったのかもしれない。が、白鳥の「内村鑑三」は鑑三の信仰の内実に迫ることはできない。白鳥は批評家として冷静客観的に鑑三との関係を振り返ったりしているが、自らの洗礼と棄教の内的秘儀を晒さなければ、鑑三の信仰の秘儀に迫ることはできないのである。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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