モーパッサン『ベラミ』を読む(連載54) ──『罪と罰』と関連づけながら── 清水 正

 

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モーパッサン『ベラミ』を読む(連載54)

──『罪と罰』と関連づけながら──

清水 正

 さて、わたしはそろそろ『ベラミ』論に幕をおろしたいと思っている。ジョルジュと女たちとの出来事を細かく検証してみようかとも思ったが、あまり興味がわかないのだ。ジョルジュが妻マドレーヌと外務大臣ラローシュ-マチゥの姦通の現場を取り押さえる場面を作者は詳細に描いているが、こういった場面は読者の好奇心をそそるに違いないが、わたしはこういった場面にたいした興味を持てないのだ。

    そもそもマドレーヌは夫に操を守ることなど約束していないし、マドレーヌが口にした〈魂の交歓〉などどこにも描かれていない。ジョルジュの美貌の虜になった女たち、ド・マレル夫人クロチルドや社長夫人などの、嫉妬や絶望や苦悶なども、徹底的な破滅を回避するだろう予定調和に包まれている。〈通俗小説〉の気まぐれな読者の好奇心を存分に満足させるような場面や筋書きも、わたしの気持を刺激することはなかった。

 社長ヴァルテールが五十万フランで購入したマルコヴィチ作の宗教画『波の上を歩むキリスト』は作品の中でそれなりの役割を果たすが、しかしそれは描かれた〈キリスト〉とジョルジュの顔の類似性にとどまる。シュザンヌ(社長の二女でマドレーヌと離婚したジョルジュの正式な妻となる)は『波の上を歩むキリスト』を眼前に見て勢い込んで叫ぶ「まあ、あなたに似ているわ、ベラミ。確かにあなたに似ていてよ。あなたに頬髯があるか、それとも絵の方が頬をそり上げていれば、二人ともそっくりよ。まあ、びっくりするくらいだわ!」と。冷静に見ているのはマドレーヌだけで、作者は「マドレーヌは、薄笑いを浮かべながら、イエスの方が男らしい様子をしていると、はっきり言った」と書いている。

 キリストを通してジョルジュが徹底的に検証されるというわけではない。ジョルジュの美貌に魂を奪われてしまった女たちと、それよりはほんの少しましな見識を備えたマドレーヌの眼差しによって、要するに表面的な印象が語られているに過ぎない。描かれた〈波の上を歩むキリスト〉は〈五十万フラン〉以上でも以下でもない。それは社長で投資家のヴァルテールの屋敷の一角に飾られた、色魔ジョルジュの美貌の範疇に重ねられた存在でしかないのである。キリストをどこまで戯画化すれば気が済むのかといった感じすら覚えた場面である。

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清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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