モーパッサン『ベラミ』を読む(連載51) ──『罪と

 

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有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)

モーパッサン『ベラミ』を読む(連載51)

──『罪と罰』と関連づけながら──

清水 正

 

 

 ジョルジュ・デュロワと女たち

 『ベラミ』の通俗的な次元での面白さは男と女の関係にあろう。第一日目に登場した茶髪の娼婦に始まり、フォレスチエ夫人マドレーヌや彼女の親友ド・マレル夫人クロチルド、そしてヴァルテール夫人など各々独自の個性を備えている。

    わたしは『ベラミ』の第一日目はテキストに即して詳細に批評を展開したが、この方法によると膨大な時間を費やすことになるので、途中から批評方法を変えることにした。二日ほどで『ベラミ』全編を読み終えたので、まずは自分の興味あるテーマに焦点をあてて描写要することにした。それはノルベール・ド・ヴァレヌによって表出された死生観であったわけだが、ここでは専らジョルジュと女たちの関係に照明を当ててみたい。

 テキストにいちいち当たるのではなく、まずは記憶によって感想を述べていきたいと思う。フォレスチエ夫人、ド・マレル夫人、ヴァルテール夫人の三人はみなそれぞれに興味深いが、わたしが最初に批評したいのはフォレスチエ夫人である。彼女は一読してすぐにその一筋縄ではいかない女の複雑さを感じさせた。最初に浮かんだ疑問は、なぜこの頭脳明晰な美女が、フォレスチエのような特別の才能に恵まれてもいない、謂わば平凡な男と結婚したのかということであった。作者はフォレスチエと夫人の出会いや、その内的交流に関して特に印象に残る記述をしていない。はっきりしているのは二人の間に純粋なロマンはなかったということである。フォレスチエは結果として、有能な美女を妻に迎えることで社内でも出世階段を順調に歩むことができた。フォレスチエは一読してすぐに理解の範疇にすっぽりおさまってしまう平凡な男であり、読者の気持を引きつける何らの魅力も備えていない。この男が軍隊時代の知り合いというだけで、ジョルジュを自宅でのパーティに招待することもなんら必然性を感じさせるものではない。昔の知り合いに、新聞社での成功を見せびらかしたいというつまらぬ虚栄心にかられてのことだったとしても、その行為の軽薄さだけは群を抜いている。

 フォレスチエは何年かぶりで会った美貌のジョルジュがいかに女にもてるかを茶髪の娼婦の件でよく理解していたはずである。ジョルジュは天性的に女を虜にする魅力を備えているのだ。フォレスチエはジョルジュがそれを武器に、女を利用して出世階段を上っていけることさえ口にしている。それにも拘わらず、なぜフォレスチエはジョルジュに警戒心を抱かなかったのか、まずそれが腑に落ちない。フォレスチエはジョルジュにぐうぜん出会ったその翌日に自宅でのパーティに彼を誘っている。このフォレスチエの警戒心のなさに驚く。フォレスチエは有能で美人の妻に安心しきっていたのだろうか。とすればこんな間抜けな男はいないということになろう。これでは愚鈍な寝取られ亭主の役割を自ら招いたことになる。そして小説展開はまさに予測通りになる。間抜けなフォレスチエは、ジョルジュの〈色男〉(色魔)の実力をそうとう見くびっていたことになる。

 虚栄心とは恐ろしいもので、相手の実力を評価しない。描かれた限りでみれば、フォレスチエは自分の妻の内的世界に一歩も踏み込めていない。設定上、夫婦であるから当然フォレスチエとマドレーヌの間には肉体関係があっただろうが、この二人にどんな内的つながりがあったのかは、作者が描いていないこともあるが、想像することがはなはだ困難である。要するにこの二人は似つかわしくないのだが、作者はそんなことには頓着していない。二人を夫婦として設定したのだから、読者は黙ってそれに従えと言わんばかりである。わたしはテキストに従順な読者ではないから、作者の設定に関してすら、自由に批評させてもらうことにする。

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発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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