モーパッサン『ベラミ』を読む(連載49) ──『罪と罰』と関連づけながら── 清水 正

清水正の著作、レポートなどの問い合わせ、「Д文学通信」掲載記事・論文に関する感想などあればわたし宛のメール shimizumasashi20@gmail.com にお送りください。

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

sites.google.com

 

お勧め動画・ドストエフスキー罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s

清水正の著作、レポートなどの問い合わせ、「Д文学通信」掲載記事・論文に関する感想などあればわたし宛のメール shimizumasashi20@gmail.com にお送りください。

清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208

                清水正・画

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)

モーパッサン『ベラミ』を読む(連載49)

──『罪と罰』と関連づけながら──

清水 正

 

  ジョルジュはフォレスチエの死を凝視し続けることはしない。彼は死を通して思索を深めるわけではないし、神へとその心を向けるわけでもない。死は確実にやってくるが、それでもって彼は虚無主義に陥るわけでもない。彼はフォレスチエの死骸から眼をそらす。このなんでもないような動作がジョルジュの今後の生き方を端的に示している。死は確実だが、だからこそ死に至るまでの生を存分に味わい尽くそうというわけだ。ジョルジュは生を楽しむに十分な若さと精力を備えている。女、金、権力をわが手に握り、欲望の欲するままに生きていく。死ぬまで現世の春を謳歌する生き方を彼は否定しない。否定する根拠がない。こういった生き方はハイデッガーの考えによれば〈世界に頽落した非本来的な生の諸様態〉ということになる。バリの社交界で、生来の美貌を最大限に利用して現世的な力を獲得しようとするジョルジュはまさに〈好奇心〉〈おしゃべり〉〈あいまい〉といった非本来的な生の様態を積極的に生きようとする。

    ハイデッガーは予め自らの死を覚悟して生きる現存在を〈本来的〉と名付けているが、そもそも価値を括弧にくくって事象自体に迫るという現象学において、〈本来的〉〈非本来的〉という価値判断を付加していることに意味はない。つまり先駆的覚悟性を引き受けた生の様態も、世界に頽落して生きる生の様態も、敢えて価値付けるのであれば等価と見なさなければならない。死までの生を積極的に享楽的に生き抜こうとする者たちの〈死生観〉を否定する根拠はなく、むしろこの生き方は死すべき運命を生きる人間の賢明さをあらわしているとも言える。死は死ぬ時に対処すればよく、予め死を覚悟して生きる生き方は野暮で無粋な生き方と見ることもできる。

 少なくとも、『ベラミ』におけるジョルジュはフォレスチエの死に立ち会っても虚無の淵に沈むことなく、現世の海をたくましく泳ぎきるエネルギーに充ちている。彼の眼差しは精神内界を垂直的に見つめる者のそれではなく、いつも現世的権力獲得といった現実的水平的な世界に向けられている。彼の本姓は宗教、哲学、文学、芸術の世界とは無縁なものによって成り立っている。それが彼の弱点でもあり強みでもある。言い方を変えれば、作者はこういった色男を巧妙に利用し、あるいは魅了される海千山千の女たちのみを登場させ、主人公ジョルジュの座を確固たるものにしているのである。

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

www.youtube.com



大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。 

エデンの南 清水正コーナー

plaza.rakuten.co.jp

動画「清水正チャンネル」https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

お勧め動画・ドストエフスキー罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s

清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208

お勧め動画池田大作氏の「人間革命」をとりあげ、ドストエフスキーの文学、ニーチェ永劫回帰アポロンディオニュソスベルグソンの時間論などを踏まえながら

人間のあるべき姿を検証する。人道主義ヒューマニズム)と宗教の問題。対話によって世界平和の実現とその維持は可能なのか。人道主義一神教的絶対主義は握手することが可能なのか。三回に分けて発信していますがぜひ最後までご覧ください。

www.youtube.com

 

www.youtube.com

www.youtube.com

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

f:id:shimizumasashi:20220130001701j:plain

表紙

f:id:shimizumasashi:20220130001732j:plain

目次

f:id:shimizumasashi:20220130001846j:plain

f:id:shimizumasashi:20220130001927j:plain

 

 

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。