モーパッサン『ベラミ』を読む(連載44) ──『罪と罰』と関連づけながら── 清水 正

清水正の著作、レポートなどの問い合わせ、「Д文学通信」掲載記事・論文に関する感想などあればわたし宛のメール shimizumasashi20@gmail.com にお送りください。

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

sites.google.com

 

お勧め動画・ドストエフスキー罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s

清水正の著作、レポートなどの問い合わせ、「Д文学通信」掲載記事・論文に関する感想などあればわたし宛のメール shimizumasashi20@gmail.com にお送りください。

清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208

                清水正・画

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)

モーパッサン『ベラミ』を読む(連載44)

──『罪と罰』と関連づけながら──

清水 正

 

 神を信じない者にとって死は人生の墓場、いわゆる最終地点である。キリスト教で言う、世の終わりの日に死者が蘇って最後の審判につくこともない。神が最終的、絶対的な審判者であって初めて〈善〉〈悪〉の区別がつくが、神の存在を認めなければ、そもそも善悪観念自体が成立しない。要するに何をやってもいいのであり、審判は神に代わって法律の条項に沿って裁判官がなすことになる。人間が裁判官であるから判定自体が絶対性を獲得することはできないが、神を認めない以上、無神論者は相対的な価値しか持たない法律に従うほかはない。仏教に属する者は、その宗教的儀礼に則って埋葬され供養される。現在、仏教の〈信徒〉で来世での天国や地獄を文字通り信じている者がどれほどいるのか知らないが、わたしの一家の墓は曹洞宗の敷地内にある。盆や彼岸の仏事に参加することはあるが、死者の魂の永遠不滅を大まじめに信じているわけではない。ただ素朴に仏事の伝統に従っているまでのことである。つまり〈いい加減〉なのであるが、〈いい加減〉をそのまま肯定している。〈死〉や〈神〉など大まじめに論議しても結局、明確な結論など出ないということを予め承知しているのである。素朴な〈信仰〉の姿というものは、議論など必要としないのである。曖昧なままの充実した姿というものがあり、大げさな身振りを必要としない静かな諦念がある。人間はわめいたり、泣いたり、叫んだりしない、静かな沈黙のうちに死を受け入れることもできるのである。天国、地獄など方便に過ぎない。悟りを開いた僧ならだれでも知っていることである。天国、地獄などで入信をすすめる者など、本来の宗教者とは言えない。

    ノルベール・ド・ヴァレヌは死を間近に感じて寂寥感に襲われている。死を諦観のうちに受け入れるという安定した精神状態にはない。彼はあらゆる宗教を否定しながら、無神論に精神の安住を見いだすことができない。死をまざまざと感じれば、出世欲、権力欲、名誉欲、色欲あらゆる現世的欲望は空しいものに一変する。現世での出来事はつかの間の夢のごとく消え去り、ひとは一人孤独に、自らの死へと呑み込まれていく。彼は死を自然の出来事として、そのまま受け入れる悟りの境地に達していない。救いの神を信じることもできず、死を受け入れる悟りの境地にも達していない彼は、孤独な世界で唯一、詩人であることに誇りを感じている。自らの詩を抱きしめて、ひとり孤独に自らの死を受け入れること、これもまたひとつの生のあり方、生の舞台からの降板と言えるだろう。

 

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

www.youtube.com



大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。 

エデンの南 清水正コーナー

plaza.rakuten.co.jp

動画「清水正チャンネル」https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

お勧め動画・ドストエフスキー罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s

清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208

お勧め動画池田大作氏の「人間革命」をとりあげ、ドストエフスキーの文学、ニーチェ永劫回帰アポロンディオニュソスベルグソンの時間論などを踏まえながら

人間のあるべき姿を検証する。人道主義ヒューマニズム)と宗教の問題。対話によって世界平和の実現とその維持は可能なのか。人道主義一神教的絶対主義は握手することが可能なのか。三回に分けて発信していますがぜひ最後までご覧ください。

www.youtube.com

 

www.youtube.com

www.youtube.com

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

f:id:shimizumasashi:20220130001701j:plain

表紙

f:id:shimizumasashi:20220130001732j:plain

目次

f:id:shimizumasashi:20220130001846j:plain

f:id:shimizumasashi:20220130001927j:plain

 

 

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。