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有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)
モーパッサン『ベラミ』を読む(連載32)
──『罪と罰』と関連づけながら──
清水 正
ここでエドゥアール・マネの油絵『フォリー・ベルジェールのバー』(一八八二年にサロン・ド・パリに出品)について少しばかり触れておきたい。題名通り、この絵はフォリ・ベルジェールのバーを描いたものである。中央に美しいバーメイドの立ち姿が描かれ、背後の大きな鏡がフォリ・ベルジェールの内部世界を映し出している。このバーメイドは酒ばかりでなく体を売る売春婦でもあったらしい。が、わたしはこの油絵を最初に見たとき、バーメイドの美しさと売春婦を結びつけることはできなかった。彼女の表情には内向的な精神の反映がうかがえる。フォリ・ベルジェールで男客の歓心を買うような女には見えない。彼女の視線は外界に向かっているよりはむしろ己の内面に向けられている。鏡に映っている世界は現実を反映しているが、彼女は現実の欲望渦巻く世界にありながら、その視線は非現実の世界に向けられている。画家マネの視線は、モデルの内部世界に向けられている。モデルの女に形而下的な魅力しか感じていなかったとしたら、おそらくこの女の内的魅力を描き出すことはできなかったと思われる。この女の表情から読みとれる憂愁、倦怠、諦念のようなもの、これはこの女の存在に人間としての深みと魅力を与えている。売春婦をただ金銭と引き替えに体を売る女と見ることはできない。
ドストエフスキーは『罪と罰』のソーニャや、『白痴』のナスターシャ・フィリポヴナなどを通して、〈街の女〉の戦慄的な内部の深淵に照明を注いだ。わたしはマネの描いたフォリ・ベルジェールのバーメイドの女にも、ソーニャやナスターシャの内的苦悶を感じる。このバーメイドの内的世界に踏み込み、彼女を一人の精神的な存在として関われる男はいるのか。マネの挑発的な声が聞こえてくるかのようである。金を払って手に入れることのできるのは、相手の〈体〉であって、〈精神〉ではない。ロジオン・ラスコーリニコフはその意味で、売春婦ソーニャの内的世界に踏み込み、その魂と触れあった上で〈嵐〉(セックス)に突入している。はたして、マネの描いたバーメイドと魂の次元で関われる男はいるのか。少なくとも画家マネは、モデルの内的世界をも描くことで、肉体的次元を超えた〈関係性〉を持ったとは言えるだろう。
モーパッサンが描いているフォリ・ベルジェールの世界は、バーメイドが見ている現実の世界であって、鏡に映った〈フォリ・ベルジェール〉ではない。マネのバーメイドは肉体は現実の世界にあるが、その精神は鏡に映った〈フォリ・ベルジェール〉に向けられている。モーパッサンの描くジョルジュ・デュロワやフォレスチェは、鏡に映った世界に踏み込むことはしない。彼らは徹底して現実のパリを、現実のフォリ・ベルジェールを生きる男として設定されている。モーパッサンの冷徹な眼差しは、人物を〈鏡の世界〉、それは理想主義や宗教的な救済などを含む非現実・空想的な世界への参入を許さないのである。
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「清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。
令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ
発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
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