大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。
お勧め動画・ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s
清水正の著作、レポートなどの問い合わせ、「Д文学通信」掲載記事・論文に関する感想などあればわたし宛のメール shimizumasashi20@gmail.com にお送りください。
清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。
https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208
清水正・画
大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。
有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)
モーパッサン『ベラミ』を読む(連載19)
──『罪と罰』と関連づけながら──
清水 正
カフェと言えばパリ、パリと言えばカフェである。カフェは画家、文学者、哲学者たちのサロンでもあり、そこはただ単に飲み食いする場所ではない。政治、経済、社会、芸術を語り合う場であり、サークルの場でもあった。しかし、ジョルジュはこういったサロンのはたしていた文化的機能に関しても何ら関心を示さない。ジョルジュと同時代を生きていた〈モーパッサン〉や小説家たちをテラスの片隅に登場させていても一向に不自然ではないのだが、なにしろ彼は色事相手の女たちを一網打尽にする〈投網のまなざし〉は天性的に備えていても、こと文化や芸術に関しては素通りしてしまうのである。
となれば、読者はこれから徹底して〈女たらし〉の美男子ジョルジュのその方面での活躍だけを読ませられることになるのであろうか。たしか作者は〈通俗小説の女たらし〉と断っていたはずだ。純文学の小説なら、主人公を思想や芸術に対して無縁の存在に設定することは読者の期待に背くことになるかも知れないが、通俗小説なら、逆に主人公は思想や芸術に関して無知蒙昧なほうがかえって都合がいいかもしれない。
それにしても、思想や芸術に関心のない、ただ上辺だけのダンディを気取っている〈女たらし〉がどのような会話術を駆使して相手を口説き落とすのか興味のあるところである。ただ美男子だけの男にくどき落とされる女のおつむ具合と感性もまたジョルジュ並みと見ればよいのだろうか。しかし、男と女のドラマは一筋縄ではいかない。男の持つ権力、社会的な地位や財産を何よりも優先する女がいれば、男の持つ美貌や肉体的魅力、人並みはずれた精力をこそ優先する女がいる。今のところジョルジュの色魔としての戦歴は何一つ披露されていないが、未来の数々の戦歴はこれから次々に描き出されることになるのだろう。
小説は一幅の絵画のように瞬時にすべてを了解するわけにはいかない。まさに小説は時間作品で、読み進まなくては新しい情報は得られない。読者はジョルジュのほんの一部を知らされただけで彼と共にパリの夜の街を歩いてきた。ジョルジュが今どこに勤め、どのような仕事をし、給料はいくらなのか。心を割って話せるような友はいるのか。ジョルジュに対する山のような質問事項をとりあえず押さえて、読者は描かれた限りの情報で彼の肖像を塗り絵の要領で徐々に完成させなければならない。
ジョルジュの歩き方一つとってもロジオンとは対極的である。ジョルジュは人混みの中で遠慮する気持ちなど毛頭ない。ぶつかる人間など平然と突き飛ばして歩調を崩すなどということはない。自分が進む道をひとの都合で変更する気などさらさらない。あくまでも自分が主役であって、この美男子は何の努力もせずにほかの者たちを脇役に押しやる。こういった男が、ポケットに残った小銭を計算しながら、カフェの客たちを見れば、自然と怒りの感情さえわいてくるということだ。
「彼は、元気よく快活そうに、軒をならべたカフェのまえを歩いていって、客の顔つきや身なりで、ひとりひとりがどのくらい金をポケットへいれているか、すばやい眼で推量してみた」――この箇所でジョルジュの関心は明白である。彼はカフェに集まってくる人間たちの内部世界などにはまったく興味がない。彼は元気と快活を精一杯装ってカファで酒を飲み交わす連中の〈顔つきや身なり〉で彼らのふところ具合を詮索し、妬み感情を露わにする。彼にとって人間の評価はまずなによりも〈顔つきや身なり〉に拠る。だからこそ彼は、蒸し風呂の夜の街をシルクハットもとらず、上着も脱がず、ひたすらやせ我慢しながら歩き通したのである。彼の見立てによれば、カフェの客たちは一人当たり〈2ルイ〉(1ルイ=20フラン=4万円×2=8万円※1フラン=2000円と見た場合)は持っている。月末までジョルジュは三フラン四十サンチーム(6千8百円)で過ごさなければならない。彼の十倍以上の金を持って飲み食いできる連中を、ジョルジュは腹をすかして街中をさまよい歩いた野良犬のような僻みきった眼差しを客たちにむけるが、もちろんその心情を見透かされないよう精一杯の虚勢を張り続ける。
大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。
大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。
エデンの南 清水正コーナー
動画「清水正チャンネル」https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
お勧め動画・ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s
清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。
https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208
お勧め動画・池田大作氏の「人間革命」をとりあげ、ドストエフスキーの文学、ニーチェの永劫回帰・アポロン対ディオニュソス、ベルグソンの時間論などを踏まえながら
人間のあるべき姿を検証する。人道主義(ヒューマニズム)と宗教の問題。対話によって世界平和の実現とその維持は可能なのか。人道主義と一神教的絶対主義は握手することが可能なのか。三回に分けて発信していますがぜひ最後までご覧ください。
大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。
「清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。
令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ
発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。