プーチンと『罪と罰』(連載28)

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                清水正・画

 

プーチンと『罪と罰』(連載28)

清水正

 

 さて、プーチンドストエフスキーの思想の偉大さを讃えているが、問題はその〈思想〉をどのように認識しているかである。ドストエフスキーの文学や思想を賛美する者がはたしてウクライナ国際法を破ってまで侵略するであろうか。ドストエフスキーの〈偉大な思想〉を問題にする前に、ロジオンの〈非凡人〉思想を問題にした方がはるかにプーチンの今回の侵略行動を理解することができるように思える。

    プーチンウクライナの欧米接近に敏感に反応し、ウクライナNATO加盟はどんなことをしてでも阻止しなければならないと考えていた。ウクライナ東部・南部の親露派の人々がネオナチによって攻撃されていることなどを理由に、プーチンは躊躇なく軍事行動に出た。プーチンは軍事行動の正当化を主張しているが、ゼーレン大統領は断固戦う意志を国民及び全世界に向けて表明し、民主主義国家の欧米諸国もまた次々にロシア批判とウクライナ支援を表明した。プーチンは短期間のうちに首都キーウを陥落するという初期の目的を果たせず、戦いは長期戦の様相を呈している。

 ドストエフスキーの思想を一義的に簡単に言い表すことはできない。ドストエフスキーロシア正教徒として信心深いキリスト者であったと断定することもわたしにはできない。ドストエフスキー文学のポリフォニイ性をそのまま認めれば、彼の精神世界には〈キリスト者〉も〈反キリスト者〉も同等の資格をもって存在することになる。

 『罪と罰』の世界だけに限定しても、そこには〈思弁の人〉ロジオンがおり、〈キリスト者〉ソーニャがおり、〈すっかりおしまいになってしまった〉ポルフィーリイ予審判事がおり、海千山千の〈淫蕩漢〉スヴィドリガイロフがおり、熱くも冷たくもない神の口から吐き出されてしまう〈弁護士〉ルージンがおり、〈ロシア最新思想の信奉者〉レベジャートニコフ……がいる。

 しかも彼らは〈〉で括った一義性では捉えきれない複雑な性格を供えている。ロジオンは〈思弁の人〉で〈殺人者〉だが、一家の犠牲になって〈淫売婦〉に堕ちているソーニャに人類の全苦悩を背負って愛と赦しを体現しているキリストの姿を見て彼女の前に跪拝せずにはおれない。ポルフィーリイ予審判事はすっかりおしまいになってしまった男だが、ロジオンに復活の未来を視る預言者でもある。淫蕩漢スヴィドリガイロフはソーニャに三千ルーブリの債権を手渡す、現実的な次元で奇跡を起こすことのできる人(чудотворец)でもある。レベジャートニコフは浅薄な革命家の貌をもちながら、ルージンがソーニャに仕掛けた冤罪事件を公衆の面前で暴く〈キリスト〉のような役割も果たしている。

 要するに、『罪と罰』の人物に限っても多義的な性格を賦与されており、一義的に解釈することは危険である。ましてやドストエフスキーの全作品を対象にして人物の性格や思想、信仰を一義的に括ることは危険であり、ドストエフスキー文学のディオニュソス的性格を看過することになる。

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令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

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発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

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