プーチンと『罪と罰』(連載17) 清水正
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清水正・画
人類破滅に至るまでの展開は実にリアルであるが、生き延びた選ばれたる人々に関しては非現実的、幻想的である。人類滅亡のシナリオのリアリティを生々しく実感した者にとって、新たな世界を創造する希望はそれこそたわいもない根拠のない幻想のようにも思える。
ドストエフスキーは〈理性と意志〉による〈思弁〉の代わりに〈愛〉による〈命〉(信仰)を提示した。エピローグから伺えるのは、愛によって復活したロジオンとソーニャが、血で汚れたる地上世界の更新、創造に乗り出さなければならない〈選ばれたる純な人々〉なのだということである。
はたして彼らに新世界の創造は可能なのか。ソーニャは別として、ロジオン・ラスコーリニコフの回心、復活には未だ疑問が残る。それにロシアの歴史はソーニャの道(信仰)ではなくレーニンの革命を選んだ。この〈革命〉の延長線上にプーチンの独裁が生まれてくる。〈理性と意志を賦与された旋毛虫〉の力は未だまったく衰えていない。否、むしろその力を強めているかのようだ。コロナがワクチンに対抗して様々な変種を生み出すことで延命するように、〈理性と意志を賦与された旋毛虫〉も革命、ソ連邦崩壊などを経て自らの免疫力を強めている。
〈理性と意志〉を人間たちに賦与したのは神である。ユダヤ・キリスト教の全能の神は、最初にアダムとエヴァを創造した時より人間を試みている。創世記では、自由意志を賦与されたアダムとエヴァが神の命令に背いて禁じられた木の実を食するかどうかが試みられ、ヨブ記ではヨブの神に対する信仰そのものが試みられる。
創世記で直接、神が禁じた木の実を食するように誘惑するのは悪魔であり、ヨブ記でも悪魔が神と相談しながらヨブを試みている。注意すべきは、神の背後には常に悪魔が潜んでいるということ、神は悪魔を叱責、排除するどころか、親密な側近として対している。
創世記の悪魔は神の秘密に通じている者としてエヴァに言葉をかけている。神が、特定された木の実を食することを禁じた理由、それはその実を食した者が神と同じように善と悪を知るようになる、そのことを神は恐れているのだと言うのである。わたしにはエデンの園から一度退出した神が、禁じた木に悪魔(蛇)に化身して身を隠し、エヴァを試みているように思える。ヨブ記では、悪魔は堂々と神の前に姿を現し、ヨブを試みる許可を神から直接得ている。神と悪魔の関係は、神と人間の関係よりもはるかに親密である
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エデンの南 清水正コーナー
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人間のあるべき姿を検証する。人道主義(ヒューマニズム)と宗教の問題。対話によって世界平和の実現とその維持は可能なのか。人道主義と一神教的絶対主義は握手することが可能なのか。三回に分けて発信していますがぜひ最後までご覧ください。
「清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。
令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ
発行日 2021年12月3日
発行人 坂下将人 編集人 田嶋俊慶
発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
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