プーチンと『罪と罰』(連載11) 清水正

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。

                清水正・画

 

プーチンと『罪と罰』(連載11)

清水正

 

  戦争ほど残酷で悲惨なことはない。人間はなぜこれほど残酷なことを戦場においては成し得るのか。自由と平和を満喫し、ヒューマニズムを日常的に実行していたごく普通の人間が、いったん兵士として戦場に送られると非人道的な残酷無惨な殺人を行い得る人間へと変貌してしまうのである。

 人類は性懲りもなく戦争を繰り返している。要するに人間は自分たちを賢明な動物だと思っているが、実は歴史から肝心なことは何も学んでいない愚かな動物だと思ったほうがいい。あるいは人間もまた他の動物と同じく生存競争(弱肉強食)の自然原理から一歩も抜け出せないものと見なしたほうがいい。

 世界大戦を二度も体験した人類が、二十一世紀の今日においても戦争をしでかすのであるから、そもそも人間は本当は平和など望んでいない生き物、必要とあらば人殺しでも何でもする生き物と見なした方がいい。地上波のメディアで「わたしは殺人を望んでいる」などという発言は封じられ、どんなにみすぼらしくてもヒューマニズムの衣装だけはつけていなければならない。こんな欺瞞を人類は絶望もせずに繰り返している。そういう意味では人類は強靱な生物である。人類は欺瞞を欺瞞と思わずに生きられる、そういった心理的装置を備えていて、この装置を破壊してまで真実に生きようとする者はいない。いてもごく希であり、そういった者は欺瞞を許容する社会・国家から抹殺されることになっている。

  ロシア・ウクライナ戦争に関する報道が、生々しい現場を伝えることはなく、視聴者は持てる知識すべてを動員して想像力を限りなく発揮するほかはない。そうすればどんな政治的軋轢があっても戦争を開始してはならないと思うであろう。

 しかし現実においては「歯には歯を」の原理によって戦争が起きてしまう。右の頬を打たれた者は、相手の右の頬に打ち返す。こうして両者は殴り合いの泥沼へと突入してしまう。

 両者ともに言い分があり、それは当事者にとっては譲れない〈正義〉となる。各国のメディアが公平に両者の言い分を報道することはない。メディアは自分たちが所属している国家の陣営に有利な報道を〈事実〉として流す。〈事実〉は編集次第によってどうにでもなる。そんなことはもはや常識である。しかし、にも拘わらず未だ報道された〈映像〉が視聴者に与える影響は大きい。ウクライナ侵略の正当な理由をロシア側の報道は繰り返し活字、映像媒体を通して流すだろうし、当然、ウクライナ側も応戦せざるを得ない理由を訴え続けるであろう。

 一応、西欧側陣地に属している日本においては、ウクライナ寄りの報道がなされ、プーチンウクライナ侵略の正当性を、プーチンの思想、信念に肯定的照明を与えたものはない。プーチンは極悪の独裁者としてのイメージを付与されて日々報道されているのである。

 

清水正の著作、レポートなどの問い合わせ、「Д文学通信」掲載記事・論文に関する感想などあればわたし宛のメールshimizumasashi20@gmail.comにお送りください。

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。 

エデンの南 清水正コーナー

plaza.rakuten.co.jp

動画「清水正チャンネル」https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%AD%A3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

お勧め動画・ドストエフスキー罪と罰』における死と復活のドラマ雑誌には https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk&t=187s

清水正の著作購読希望者は下記をクリックしてください。

https://auctions.yahoo.co.jp/seller/msxyh0208

お勧め動画池田大作氏の「人間革命」をとりあげ、ドストエフスキーの文学、ニーチェ永劫回帰アポロンディオニュソスベルグソンの時間論などを踏まえながら

人間のあるべき姿を検証する。人道主義ヒューマニズム)と宗教の問題。対話によって世界平和の実現とその維持は可能なのか。人道主義一神教的絶対主義は握手することが可能なのか。三回に分けて発信していますがぜひ最後までご覧ください。

www.youtube.com

 

www.youtube.com

www.youtube.com

 

清水正研究」No.1が坂下ゼミから刊行されましたので紹介します。

令和三年度「文芸研究Ⅱ」坂下将人ゼミ

発行日 2021年12月3日

発行人 坂下将人  編集人 田嶋俊慶

発行所 日本大学芸術学部文芸学科 〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1

f:id:shimizumasashi:20220130001701j:plain

表紙

f:id:shimizumasashi:20220130001732j:plain

目次

f:id:shimizumasashi:20220130001846j:plain

f:id:shimizumasashi:20220130001927j:plain

 

 

大学教育人気ブログランキングに参加しています。応援してくださる方は押してください。よろしくお願いします。