清水正への原稿・講演依頼は qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー・宮沢賢治・宮崎駿・今村昌平・林芙美子・つげ義春・日野日出志などについての講演を引き受けます。
清水正が薦める動画「ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ」
https://www.youtube.com/watch?v=MlzGm9Ikmzk
これを観ると清水正のドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。
『清水正・宮沢賢治論全集 第2巻』が刊行された。
『清水正・宮沢賢治論全集 第2巻』所収の「師弟不二 絆の波動」より伊藤景「演出家・清水正を知る」を3回にわけて連載する。
「演出家・清水正を知る」(連載2)
伊藤景
ビデオカメラ越しに清水先生に相対するときの緊張感は、多分他の誰にも分からないだろう。まるで、肉食動物と草食動物の間に流れている緊張感に似ている。清水先生はよく「ライオンとシマウマ理論」のお話をされる。この理論でいう�ライオンとシマウマ�の関係は、私と清水先生の関係に類似している。もちろん、清水先生が私を試そうとしているといったことはないので、私が一方的に感じているものである。シマウマは、生まれたときからライオンが自分の命を狩る危険な動物であることを理解しているからこそ、本能的にライオンに殺される心配のない距離を把握している。このラインを一歩でも侵した瞬間にシマウマはライオンの獲物として狙われることとなる。ライオンとシマウマが共存しているかのように見える草原や水辺であっても、実はお互いの限界までに研ぎ澄まされた緊張感の元にその光景は成り立っているのである。私も、まるでシマウマのように清水先生の一挙手一投足に感覚を研ぎ澄まさせて、察知しようとしている。急な方向転換にも、足の動きを見つめ続けることによって対応する。しかし、足ばかり見続けているわけにはいかない。急に身振りでもって、ものの大きさや方角を先生が表現することもある。よって、手の動きも同時に見つめなければならない。ライオンを感じるシマウマのように、私は必死に清水先生の動きを感じ続ける。スリルと緊張に満ちた空間であるが、それさえも超越するやりがいを感じる。そうでなければ、この仕事から早々に逃げだしていただろう。私が、ずっと清水先生の講義を追いかけ続けていられるのは、講義自体が楽しいからだ。ドストエフスキーにトルストイ、林芙美子、志賀直哉に畑中純、日野日出志といったように、幅広いジャンルの作家や作品を取り上げて、今までに聞いたこともないような作品批評が展開される。特に、清水先生の宮沢賢治の講義は、録っている私までもが胸躍るような講義である。
宮沢賢治作品は、多くの人々によって読まれ、研究されてきた。ときには、アニメーション化され映画化され、多くのクリエイターの創作意欲を刺激した。しかし、どれもが宮沢賢治の描いた世界の表面をなぞっているだけなのである。本当に彼が描いた世界を垣間見ることができるのは、清水先生演出による演劇・宮沢賢治作品だろう。