どうでもいいのだ;">──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載32)




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どうでもいいのだ
──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載32)
まずは赤塚不二夫・対談集『これでいいのだ』から

清水正


昇格人事問題


落語界に限らず、どんな組織体にあっても昇格をめぐる人事に関しては人間関係の図が明確にあぶり出されることになる。ふだん、仲良く装っていても、いざ人事になると本音が露呈する。
 小さんが会長を務める落語協会が大量真打昇進を決定したとき、小さんを会長に推薦した円生がまず反対した。名人円生にとって、実力のない者までいっぺんに真打にするという理事会の決定を呑むことは屈辱ですらあったろう。
 二つ目が大人数で、このまま年に一人か、二人の真打昇進では、いつまでたっても真打になれない者が多くでる。これでは落語界全体の衰退にも繋がりかねないと小さんの落語協会は判断した。
 当事者でない者から見れば、そんなことで真打が決定されるのは腑に落ちない。ましてや落語修行にまじめに取り組んできた二つ目にしても、大量真打昇格は理不尽に感じたであろう。円生の主張は正論である。どうしてこの正論が通用しないのか。
 組織体において正論がそのままスムースに受け入れられることは、まずないといっていい。円生の実力主義を認めれば、いつまでたっても真打になれない落語家が出てしまう。それを望まない二つ目と、その師匠が多数を占めれば、暗黙のうちに円生の正論に従わない立場をとるようになる。
 小さんは円生とは違って、実力よりは組織体のバランスを考慮するタイプに見える。いくら正論とは言え、それが組織全体からみて過激的なものに見えればそれを敢えて選択しない。
 円生は小さんに会長の座を譲ったと言われる。円生にすれば、とうぜん小さんから前もって相談ぐらいはあると思っていただろう。相談されれば、妥協の余地も生まれたかもしれない。
 相談もされず、自分の主張と真逆の決定を下されれば、今度は前会長としての、名人落語家としての意地が出てくる。この男の意地が、実にやっかいもので、ひとたび怒りの拳を振り上げれば、ちっとやそっとではおろすことができなくなる。






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