星エリナのほろよいハイボール(連載113)

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星エリナのほろよいハイボール(連載113)

女子の鞄の中を見る
星エリナ

 

 
 中学生男子というものは多感な時期でありますから、まぁ、いろいろなことに対して興味津々なんです。それと同時に、中学生女子というものも思春期真っ盛り、プライドが高く人にバカにされることが恥ずかしくって嫌なんです。
 そんな中学生時代の私と言えば、常に腹痛との戦い。今思えば精神的なものと便秘が重なっただけだったんだけど。だから私のリュックの中には常に腹痛の薬が入っていた。私が愛用していたのは白い錠剤の薬。小粒で、噛んで服用することもできるので、つまり水がなくても飲めるもの。通常は瓶に入って販売されているものなんだけど、瓶を学校に持っていくのはさすがに重い。ということで私は透明の密封できる袋に入れていた。手のひらサイズの袋に常に十錠ほど。「うっ」ときたらさっとトイレで飲んでいた。正しい服用方法はたぶん違うんだけど、私にとってその腹痛止めの薬は一種の安定剤なので、それで落ち着いていた。でもその薬を飲んでいることは基本的に隠していた。だって先生にバレたらきっと取り上げられるし、みんなにバレたら心配されたりするだろうし。とにかく自分の中で落ち着くために使っていたのだ。
 当時私は吹奏楽部。朝練習のために毎朝、すぐ近所に住んでいた吹奏楽部の友だちと一緒に学校へ通っていた。部活で誰が下手かという話や、誰かが誰かをいじめている話、先生に対する愚痴ばかり話していた。別にそれらの話に特に深い意味はない。朝一番の話などどうでもいい。学校まで三十分以上歩き続ける。この時間の暇を潰しているだけだった。
 しかし、ある日の朝、どうでもよくない話が出た。
「ねぇ、なんか悩み事でもあるの?」
 急に心配される私。詳しく話を聞いてみると、なんと男子が私の鞄の勝手に見たらしい。それは一部の男子の間で流行っていたイタズラだった。体育やら選択授業でいない女子の鞄の中を勝手に見る。匂いを懐かしむ(連載109)でも書いたけど、当時は香水が流行りでみんな重たい瓶を鞄に入れていた。だからその香水を見たり、筆箱を見たりしていたらしい。実際の彼らの目的は携帯電話やお菓子など、学校に持ってきてはいけないものを持っていないかチェックし、弱みを握ろうとしていたのだ。
 私は全く知らなかったのだけど、このイタズラは女子の間で警戒されていた。別の女子が鞄を見られたときに、小さなポーチが入っており、化粧品などではないか、と中学男子は興味津々、そのポーチを開けたらしい。すると中身は生理用ナプキン。何人かは「ティッシュいっぱい持ってるー」と言っていたらしいけれど、明らかにティッシュではないことに気付いていた男子もいたようだ。思春期女子は生理用ナプキンなんて男子に見られるのは耐え難いこと。だから、生理の子は男子のイタズラに気をつけろ、と噂になっていたのだ。
 そんなことは知らず、気がついたらそのイタズラの標的に私がなっていたらしい。そして男子たちは見つけてしまったのだ。私の腹痛止めの薬を。透明の袋に入った白い錠剤。アルファベットのイニシャルが彫られた錠剤。それだけを見た男子たちはそれを『ヤバイやつ』だと思ったらしく、慌てて鞄に戻しイタズラをやめたらしい。それからというもの、私は裏でこそこそと「星、やべーよ。あいつ、やっちまってるよ」と言われていた。
「そういうのやっぱりまずいし、やめよ?」
 なんで私は近所に住んでいるちょっと太めで握力がすごく強い女の子に諭されているんだろう。とにかくその場で誤解は解き、その友人のおかげで次第に噂は収まった。まぁ、結果的に私の薬がきっかけでそのふざけたイタズラはおさまったので良かったのだろう。それに、私は時々携帯電話を学校に持って行っていたので、本当にそれが見つからなくて良かったと思っていた。

 



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