どうでもいいのだ──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載12)

どうでもいいのだ
──赤塚不二夫から立川談志まで──(連載12)
まずは赤塚不二夫・対談集『これでいいのだ』から

清水正


明石家さんま島田紳助


 お笑い界の世界で水平軸を生きているのは明石家さんまで、その全盛期は見事に水たまりをすいすい走るアメンボのごときスマートっぷりであった。結婚して衰弱し、離婚して復帰したが、ベタつき具合は見逃しようがない。水平のゼロを走る者は天才だが、ベタつきはじめたらどうしようもない。が、さんまの水平軸に匹敵する垂直軸のタレントはいない。武田鉄也は見せかけの垂直軸で、これは若者の恋愛相談役の次元にとどまる。島田紳助のしゃべくりは一流、一見、垂直軸風に見えるが、さんまの水平軸をシーソーのように上下に動かしているようなものだ。しかし、これはすごいことで、結局、彼はテレビ・お笑い世界を逸脱してしまった。
 今世紀最大のテレビお笑い界の寵児紳助を、テレビ界の〈常識〉が追放してしまった、この逆説を理解しないテレビが、笑いを求める視聴者から見捨てられるのは当たり前ということである。「行列のできる法律相談所」は、紳助の一人漫談の番組と化していたが、ほんとに笑わせたのは、ゲスト以上にゲスト化していた弁護士の誰一人として、からだを張って紳助の弁護をしなかったことだ。紳助と一緒に番組を降りるぐらいの意気のある者がいなかったということは、お笑いとは関係なくさびしいことだ。