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星エリナのほろよいハイボール(連載99)
ワンマンライブを祝う
星エリナ
大学一年生の秋ごろだった。渋谷であのバンドに出会ってから1年と半年くらいたったころ。なんとワンマンライブを恵比寿ですることが決定した。彼らは一層営業活動に力を入れ、路上ライブも増やした。時間と場所さえあれば私は通い続けた。そのころには顔見知りから友人と言えるくらい仲良くなったファンの子たちもいて、ライブを見て彼女たちと話すことが楽しくなっていた。どちらかというと私は積極的に会話に誘うことがない。常に集まってきゃっきゃっと話す集団とは、顔見知りというか表面上の付き合い程度だった。
その頃はアルバイトをはじめたばっかりで、まだお給料が入ってなく金欠な私。ワンマンライブは路上ライブとは違ってもちろんチケット代がかかる。ドリンク代もかかる。少し痛い出費ではあったが、それ以上に彼らを応援したいという気持ちが勝っていた。私の背中を押してくれて、私の夢を応援してくれた彼らを私も応援したかった。
ワンマンライブ当日。私ははやめに着てしまったので恵比寿を歩いていた。飲み物とガムがほしかったので、ライブハウスの近くにあるコンビニに寄った。入るとすぐ横にコピー機があって、なにやら見覚えのある人がコピーしている。
「あ……」
そこにいたのはバンドメンバーでギタリストの方だった。ライブ前に会ってしまった。
「来てくれてありがとー。ちょっと見られちゃいけないところ見られちゃった」
と、笑う彼。じゃー見ないようにします、と言ってすぐに離れたけれど、会えて一言でも話せたことが嬉しかった。彼にはたくさんのファンがいるけれど、少しだけ出し抜けた気分。ちょっと幸せな気持ちで会場へと行くと、ファンの女の子たちがすでに並んでいた。一部の常に集まっている集団に少しだけ挨拶して、並ぼうとしたら、呼び止められた。
「実は私たちでメンバーにプレゼントしようと思っているんだけど……」
と言いながらパズルと色紙を見せられた。どうやら端っこのスペースが余っていて、誰かにメッセージを書いて欲しかったらしい。私はニコニコしながら当たり障りのないメッセージを書いた。だけど心の中では、面白くなかった。彼女たちの誰よりも私のほうが彼らのファン暦長いし、さっきもギタリストの人と会って話したし。自分のほうが、自分のほうが、という気持ちが強くなっていくのがわかった。ただ、ふと思った。自分は何と比べているんだろう。私は純粋に彼らへの感謝のつもりで応援していたのに。いつのまにか自分の居場所になっていて、その場所をとられたくないがために、おかしな嫉妬までしていた。
そんな自分に嫌気が差して、おかしなことを考えず彼女たちに協力して、バンドを応援しようと思えた。紙でできたカラフルな花をつくり、ライブのアンコールのときにみんなで花を振り、ワンマンライブをファンも祝った。ライブ自体は楽しいし、祝いたい気持ちも本物だった。だけど、自分の中の嫌な部分にものすごく気付いてしまったのだった。
※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。