小林リズムの紙のむだづかい(連載442)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックジャパンで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

小林リズムの紙のむだづかい(連載442)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムさんがエッセイ本をリンダパブリッシャーズ(http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru)から刊行することになりました。本のタイトルは『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった八日で辞めた話』発売日四月五日。
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru
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小林リズムの紙のむだづかい(連載442)




【これで死んだら本望】


 最後にレバ刺しを食べたのは18歳のとき。当時バイトしていた飲食店の店長に連れて行ってもらった焼肉屋で食べた。赤黒いグロテスクな、でろんとした塊をわりばしで摘まんで、ごま油に浸して食べたとき、「なにこれ…!」と衝撃を受けた。生レバーが舌の上でやわらかくとけて、あとに深みのある甘さだけが残る。数十秒前まで「見た目グロいですねー」と自分が言ったことなどすっかり忘れてしまうほどの、感動するおいしさだった。けれど、一緒に連れて行ってもらった先輩は「わー、あたしこれニガテー」と言ってひとくち食べてやめてしまったので、私は嬉々として先輩のぶんまでいただいたのだ。こんなにおいしいものを、おいしいと思わないなんて信じられなかった。

 けれどそんなに頻繁に食べるものでもなくて、レバ刺しの感動は日常の波にのまれてすっかり薄らいでいった。日本でレバ刺しが禁止されると聞いたときは、「えー、おいしいのにー。食べられなくなっちゃうのかー」と世間並のリアクションをして、「でも、わざわざ混んでいるところを並んで食べに行くのはちょっと面倒だよねー」と、レバ刺しと最後の別れを告げることさえしなかった。そしてレバ刺しという美味しいものがあったということすら忘れていたのだ。

 そんなこんなでこの間、仕事関係で関わることになった一回り以上年上の先輩に焼肉屋に連れて行ってもらった。彼は非常に肉を愛している人で、何が食べたいかと聞かれたら100%「肉!」と答えるほどの肉好きな人だった。網の上に焼かれた肉を、まるで好きな子を扱うように丁寧に優しくひっくり返す。網の上に乗せた時間を数えて、じっと肉を見つめて焼き具合を確認する。「食べられればいい」というガサツなスタンスの私は、彼の焼肉に対するこだわりを見て、肉への深い愛情を感じた。これだけ大事に焼かれたら、それはそれは肉も幸せなことだろうと思った。じっくりと愛されて焼かれた肉は、噛むと口の中でぎゅっと旨味があふれて、抜群に美味しかった。

 途中で「あぶり生レバー」なるものが運ばれてきた。私がそれを網に乗せようとすると、「俺はこのまま食べるよ」と言って、彼はわりばしでそのまま「あぶり生レバー」をつまみ、ごま油に浸して食べた。焼かずに食べるという発想がまったくなかった私がびっくりして目を見開くと、「脱法生レバー」と言って笑われたので、私は彼の肉への愛を信じることにした。日本でレバ刺しは禁止されたけれど、それでもレバ刺しが食べたいという人には「あぶり生レバー」という抜け道があるらしい。もちろんそれを焼いて食べなければならないのだけど、あぶってあるから生で食べても大丈夫なのだという。(でも本当はいけないらしいのでやったらダメです)。

 舌をやわらかく包み込むレバーのとろみと、奥ゆかしい甘味。ふわっとのどを通って消えてしまう、儚さ。もう一生口を開かなくてもいいと思った。このレバ刺しを食べるために、私は生まれてきたんだ……。と、しばし幻覚を見てしまうほどの、夢心地なおいしさ。これを食べて死ぬことになるなら、本望だと思った。


   

 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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