小林リズム氏感想

小林リズム氏感想

日本大学芸術学部映画学科理論評論コース4年
沼本奈々


彼女を知ったのはミスiDオーディションの時だった。
私の尊敬する清水師のブログで、エッセイを書いてる可愛い子が
ついにアイドルになるらしい!と半ば興奮気味にインターネットで検索してみる。

小林リズムと検索すると名前もルックスも
可愛らしい彼女のプロフィールがでた。
しかしその愛らしさとは相反して、文章はたくましく毒っ気のある文体が
特徴的であった。


彼女は毎日休まずにブログを更新しているという。
そのど根性なブログスタイルに私は非常に興味を持ち、
彼女は瞬く間に私の中の要チェック人物リストに追加となった。


そんな彼女のファーストエッセイ本
『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった8日で辞めた話』
(通称『やめ8』)が。ついに先日発売日をむかえる。

小林リズム氏の実際に体験した就職事情から、
入社したとんでもない会社での面白いエピソード(これがなかなかヘビー!)が
満載であった。


実際、私も現在4年生ということで就活の話はなかなかに
腹にズンとくる。

え、まさか私は大丈夫だよね!?
なんてついつい読み進めながら思ってしまうのだ。

でも彼女の経験は未だ、どこかで第三者が経験している。
いつ自分にそのターンがきてもおかしくないのだ。

それを回避するにはやっぱり『やめ8』を読んで
しっかり 現状を知るに限る。


6月に入り梅雨の時期。
じめじめした空気の中駅には多くの就活生が
リクルートスーツに身を包み神妙な顔をしている。


私はぜひともそんな就活生の皆様ひとりひとりに
この本を見せて歩きたい。
人生何があるかわからないぞ、と。

面接でケーキがでてきたら
ニコニコしてちゃだめなんだぞって
諭してあげたい。


しかしこの本、大変なことばかり書かれているわけではない。


この本を読んで何が一番大切だったかって、

助けてくれる人の存在に自然と
気づかせてくれるのだ。

リズム氏のつらい体験、それには陰で支えてきた
家族、恩師、友達の存在が自然と描かれている。

白々しい感動秘話ではなく、
体験の端々からあふれ出す自然な人間関係の結びつき。


そう!そこなんだ!


就活生の神妙な顔にこの本を一発くらわせたいのは、
その思いつめた先にあるものが本当に正しいのかを知ってほしいからだ。

リズム氏の本で私は、社会に出ることの不安を感じた。
でも同時に私はこんな失敗は簡単に起こさないという確証もできた。

それは信頼できる教授陣、無償の愛を注いでくれる家族、
頼れる友達にいつでも泣き言が 言える環境を再確認させてくれたからだ。


就活の怖いところは
誰もが認められたい、という心理が負に働くことだ。

誰もが就活という戦場で
食うか食われるかの戦いをしている。

そのために自分を偽ってしまったり、
自分らしさを出せずにいる人は非常に心苦しい思いを
しているだろう。


これらはジワジワと21そこらの若者を蝕み、
荒んだ心をもたらしている。

もちろん、この本はほんの一例なので
乗り越えた先には明るい未来がある者が
ほとんどだろう。

しかし奇しくも乗り越えられなかった者は?

私は数年前から 就活で鬱になったり
自殺をする若者のニュースを耳にしている。

そんなバカげたことあってたまるか!

しかし、自殺でもしたくなるような気持に
させるなにかが就活には潜んでいるのだ。

そのときに思い出す。

テンプレートな成功者でなくても
自分を承認してくれる人の存在。

それがなにより大切ではないだろうか。

やめ8は
そう気づかせてくれる本なのだ。


リズム氏がどこまでを狙って書いていたのかは
わからないが、

面白エピソードの裏側には
意外にずっしりと心に溜まる感動がある。


本自体は非常にライトで読みやすく
一日あれば絶対に読み終わる。

ましてや日芸のあの有名教授陣が
仮名で登場するので日芸生はさらに楽しめるだろう。

ぜひとも目を通してみてほしい。
そして私と、感想を語らいましょう!


みなさん、
ケーキはだされてもニコニコ食べてはいけません!※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。