小林リズムの紙のむだづかい(連載430)

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックジャパンで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

小林リズムの紙のむだづかい(連載430)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

http://d.hatena.ne.jp/shimizumasashi/searchdiary?word=%2A%5B%C0%B6%BF%E5%C0%B5%A4%CE%C3%F8%BA%EE%CC%DC%CF%BF%5D


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。
小林リズムさんがエッセイ本をリンダパブリッシャーズ(http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru)から刊行することになりました。本のタイトルは『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった八日で辞めた話』発売日四月五日。
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru
http://lindapublishers.com/archives/publications/dokonidemoiru
小林リズムの紙のむだづかい(連載430)



【のりちゃんの社交性】


 小学校の頃の私は泣き虫で、学校が大嫌いだった。毎朝学校へ行く時間帯になるとしくしく泣いて、頑として家から離れようとしない私に親や大人たちは困り果てていた。「学校に行きなさい!」と怒る母と、呆れたように苦笑いする近所の大人たちに囲まれて、私は絶望的な気持ちだった。大人は決まって私を学校へ行かせようとさせるし、平気で「どうして学校に行きたくないの?」なんて聞いてくる。6歳だった私は、自分がどうして学校へ行きたくないのかよくわからなかったし、そんな状態だったから自分の気持ちを説明することもできなかった。何も言えず、ただただ学校へ行きたくないと態度で示し続けるしかなかった。けれどそれはただのワガママで怠け者とみなされ、いよいよ大人は本格的に私の敵にまわる。

 そんななか、唯一のりちゃんというお姉さんだけは違った。彼女は私と一緒に学校へ登校するという任務を任された、一歳年上の近所のお姉さんだった。彼女は学校に行きたくないとごねる私にもいつも優しく接してくれた。私が騒ぐせいで、のりちゃんは学校に遅刻しかけたことも何度もあったと思う。それでも彼女は一度も私を咎めなかった。理由もろくに言えずに学校へ行きたくないと拒否する私のことを、一度だって変人扱いしなかったのだ。
 彼女はそのとき7歳とか8歳だったのに、子どもとは思えないくらいにとても礼儀正しくて、大人たちからも「のりちゃんは良い子ね」「しっかりしているね」と定評があった。のりちゃんは絶対に意地悪しないし、怒らない。あのときの私にとって、のりちゃんはどんな大人よりも一番世界で一番優しい人間だった。そしてその頃からひねくれ者だった私は、それは大人に好かれるための、のりちゃんなりの処世術なのだと思っていた。

 あるとき、私がのりちゃんと楽しくおしゃべりしながら通学路を歩いていると、突然空から液体がふってきて、私がかぶっていた白い帽子のつばの部分と、ランドセルを濡らしたことがあった。一瞬の出来事に私は自分の身に何が起こったのか理解できず、ぼうっとしていた。すると、のりちゃんは自分のランドセルからハンドタオルをとりだして、私のランドセルを拭き始めた。そして、「どうしたの?」と聞く私に「なんでもないよ、大丈夫だよ」とだけ言ってしきりに慰めた。私は何が「大丈夫」で、のりちゃんがどうして必死に私のランドセルを拭いているのかわからなかった。ただ、のりちゃんが「大丈夫」と言うから大丈夫なのだろうと、安心してのほほんと呑気に構えていた。

 あれは間違いなく、カラスが私のランドセルに尿を落としたのだ。そう気づいたのは、大人になってからだ。突拍子もなくふと思い出して「ああ、あのとき空からぼしゃんとふってきた液体は、カラスの尿だったんだな」と理解した。そして何も言わずに自分のハンドタオルで拭ってくれたのりちゃんの優しさを知って、胸がきゅうっとなった。
 のりちゃんが小学校を卒業して、私が学区外の中学校に進学してからは彼女とまったく関わらなくなった。そうして私は自分が泣き虫だったことも、登校拒否児だったことも、そしてのりちゃんのことさえもずっと忘れていた。



 

 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
http://ameblo.jp/nanto-kana/

twitter:@rizuko21


※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。