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ユッキーの紙ごはん(連載42)
【これも一種のノスタルジー】
ユッキー
自室の棚に並べられたゲームソフトを見ると、無性に悲しくなる。
「つまらない大人になっちゃったなあ?ええ?」 と責められているような気分。
私はゲームが大好きだった。たしか、昨年の春頃までは。
ヤクザアクションゲーム 「龍が如く」 の1と2は、本編だけでなくサブストーリーも全てクリアした。ある1つの難関サブストーリーのクリアのために5時間費やしたこともある。「ICO」 という、美少女と手を繋いで城から脱出するゲームは5周した。難易度と恐怖度が非常に高いことで知られるホラーゲーム 「SIREN」 もクリアし、アーカイブというストーリー補完アイテムもコンプリート。
他にもいろいろなゲームをやっているが、あまりに長くなるので省略。
ところが、何かきっかけがあったのかなかったのか、気付くと私はパタッとゲームをやらなくなっていた。
これは非常に由々しき事態だった。なにせ、ゲーマーであるということが私のアイデンティティの一部……というのは大げさに聞こえるかもしれないが、ただでさえ少ない趣味を1つ失うのは恐ろしいことに思えた。
無理やり恋愛に喩えると、「彼氏を大好きだと思っていたはずなのに、本当は彼じゃなくてもよかったのだという自分に気付いたときの空虚感」 みたいな? (想像です。体感したことはありません。けっ! )
そんなことはない! 私はゲームが好き! ちょっと忙しくてゲームする余裕がなかっただけ!
半ば強制的に思い込み、ブックオフへと出向いた。中古のゲーム棚を眺め、ずっと気になっていたものを2000円ほどで買ったり、見るからにおばかなゲームだと思われる忍者もののゲームをたった100円で買ったりして、満足して帰宅。やっぱり私はゲームが好きなんだ!
数日後、はっと気付く。棚の隅に雑多に積み上げられたゲームソフト。
いや、ちゃんとやりたかったよ? ちょっと忘れてただけじゃん。自分に言い訳をし、重い腰をあげて、忍者ゲームをプレイステーション2にセットした。起動中の暇つぶしに、説明書をパラパラと読む。頭に入ってこない。
「おばかゲーム」 という私の認識を打ち砕き、忍者ゲームはかなり丁寧に作り込まれていた。
そして、む、難しい……。
セカンドステージで早くも音を上げ、コントローラーを放り出した。
時計を見ると、1時間も経っていない。絶望した。前は、ゲームし始めると寝る間も惜しんでプレイしていたのに、合計プレイ時間100時間超えが普通だったのに……。
そして今でも、中古で買っておきながらプレイしていないゲームがいくつかある。
ブックオフのおねーさんがゲームソフトに掛けてくれたビニールを開ける気にもならない、という気持ちを自覚したあたりで、ゲームに夢中になれなくなった自分を受け入れた。
私は少年の心を失ってしまったんだ……。
「ゲームなんて時間の無駄でしかないんだから、むしろ良かったじゃん」
嘆く私に、多くの人はそう言ってくだらないものを見る目を向けるけれど。
時間の無駄でしかないくだらないものをいつまでも楽しんでいたかったなあと、ため息が消えることはない。
※肖像写真は本人の許可を得て撮影・掲載しています。無断転用は固くお断りいたします。