星エリナのほろよいハイボール(連載61)
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星エリナのほろよいハイボール(連載61)
ホタルを見にいく
星エリナ
ホタルはキレイな水があるところに生息する。現在野生のホタルを見ることが出来る場所は少なくなっている。今は鑑賞物として、飼育されている。ホタルを見るためのマナーだとか、上手に見つけるコツなんかをネットでは紹介しているサイトもあるくらいだ。
そうやって、大切にしましょうと声をかけることを、悪いことだとは思わない。けど、なんだかなあ。ホタルはそんなに崇められて、どんな気分だろう。ホタルの棲家を奪っていったのは人間なのに、鑑賞対象にまでされて。保護が本当に目的だろうか。そんな狭い空間を飛ぶホタルを見て、楽しいのだろうか。私にはわからなかった。
なんでわからなかったのかっていうと、野生のホタルが私にとって身近だったからだ。
福島県小高町。県道34号線沿いに祖母の家はある。裏には大きな山と小さな川、畑。自然ならなんでもあった。小高町は原町と鹿島町と合併し、南相馬市になった。相馬といえば大きなおまつりがある。相馬野馬追いまつり。私はそのおまつりが大好きだった。7月の後半に開催されるから、そのおまつりに合わせて祖母の家へ行っていた。
7月末、おまつりを見て、夜8時ごろにみんなで家を出る。懐中電灯だけを持ってね。34号線を南下する。途中、農家の小路を右へ入る。右手には田んぼ。左手には用水路と山。電灯などはない。ただただまっくらな道。ちょろちょろと流れる水の音だけを聞いて歩く。空の星がすごく近く感じられる場所だった。地上が暗いから、星の輝きがより美しい。不意に目の前を緑色の光が飛ぶ。ここには、野生のホタルがいた。たくさんいた。自然だった。当たり前の風景だった。落ち着く、私のベストプレイスのひとつ、だった。
最後にここへ行ったのは、高校二年生の夏だった。あれから4年が経つ。こうして書いていないと、あの場所のことを忘れてしまいそうになる。すごく、寂しいんです。
あれから、ホタルがどうしているのか、見に行っていない。ホタルは、どうなったの。まだ、あそこにいるの。あそこにホタルがいたこと、誰が覚えているのだろう。あの裏山にはすごく急な階段を上ると小さな神社があった。あの田んぼにはすごく大きな蛙がいた。夜になると蛇が出るのが怖くて、夏は大きなオニヤンマが部屋に入ってきて、ぶつかったりした。私は忘れないでいられるのだろうか。
ときどきすごく、怖くなる。
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