小林リズムの紙のむだづかい(連載325)

小林リズムの紙のむだづかい(連載325)
清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演などを引き受けます。

D文学研究会発行の著作は直接メール(qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp) で申込むことができます。住所、電話番号、氏名、購読希望の著書名、冊数を書いて申し込んでください。振込先のゆうちよ銀行の番号などをお知らせします。既刊の『清水正ドストエフスキー論全集』第一巻〜第六巻はすべて定価3500円(送料無料)でお送りします。D文学研究会発行の著作は絶版本以外はすべて定価(送料無料)でお送りします。なおД文学研究会発行の限定私家版を希望の方はお問い合わせください。


清水正の著作はここをクリックしてください。

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四六判並製160頁 定価1200円+税

京都造形芸術大学での特別講座が紹介されていますので、是非ご覧ください。
ドラえもん』の凄さがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp

清水正へのレポート提出は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお送りください。


小林リズムさんが八月九日「ミスID」2014にファイナリスト35人中に選ばれました。
http://www.transit-web.com/miss-id/

小林リズムの紙のむだづかい

【ピアノの先生】



 
小学校から中学生のときまで私が通っていたピアノ教室の先生は、美人だった。グランドピアノの上にはオルゴールやお花や写真立てが並べてある。私は前の子のレッスンを待っているときに、よくその写真を眺めていた。写真に写った若い頃の先生からは、溌剌で濃厚な美女オーラが発散されていて「ああ、近所でも評判の美人だったんだろうな」とわかる。肩下にすとんとのびた黒髪、清楚な水色のワンピース、くっきりと整った顔立ち。

写真の横には、『風と共に去りぬ』のビデオがあって、それは私が通い始めてからずっと同じ場所に置かれ続けていた。キスする寸前まで男女が顔を近づけている作品パッケージ。そのムードから、戦時中の切ない恋物語なんだろうな……と子どもながらに想像して、「いつか見てみよう」なんて思っていたのだけど、それが叶ったの結局20代に入ってからだった。そして想像していたベタ甘の悲しい恋物語とは反対の、スカーレットの強い女っぷりを目の当たりにして、やけに納得した。「なるほど…!先生にはこのスカーレットがよく似合う…!」

銀行員の重役とお見合い結婚をしたらしい先生は、もともとご令嬢育だったのだと思う。話し方も雰囲気も上品で、田舎では浮くほどだった。待ち時間には外国から輸入したような可愛らしいキャンディや、高級そうなマドレーヌなどを出してくれたし、繊細な取っ手のついた上質なティーカップに紅茶を注いでくれることもあった。でもやっぱり、先生は怖かった気がする。怒鳴ったりはしないし、もちろん暴言も吐かない。けれど、ろくに練習もせずにピアノのレッスンに行ったときの、先生の静かに怒る迫力には終始緊張した。

一度、私が50代後半の女性を指して「あのおばあさんが…」と発言したことがあった。先生の目の奥がゆらっと揺れた。
「あのね、りっちゃん……。50代は、おばあさんじゃないのよ…?」
静かにそう諭された。
「あ、ハイ……」
私はそのあと手汗かきまくりの手で鍵盤に触れた。

風と共に去りぬ』を見終えたとき、先生がこの作品を気に入っていた理由を想像して、
なんだかせつなくなった。



 小林リズムのブログもぜひご覧ください「ゆとりはお呼びでないですか?」
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