ユッキーの紙ごはん(連載35)

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ユッキーの紙ごはん(連載35)


【僕らはみんな生きている】


ユッキー


 
 
 
  最近、激しい胃痛に襲われた。初めは 「食べすぎかなあ」 と暢気に構えていたのだけど、胃痛はちっとも治まらず数日間続き、ひどい時は痛みのあまり嘔吐した。

 連載26で書いたが、私は悪夢ばかり見る。悪夢のプロフェッショナル。
 ところが、胃の痛さに眠れないとのたうちまわりながらある一瞬痛みのあまり気を失うように寝るという寝方をしたところ、とても良い夢を見た。穏やかなショッピングモールの中を、格好良い男性と手を繋いで歩いている夢。
 こんなに苦しんでいるのにいつものような悪夢では可哀想だ、と神様的存在が慈悲をくれたのだろうか。それとも私のゆとり仕様の身体が大げさに捉えて死を感じ、最後に良い思いをさせようと思ったのだろうか。

 病院に行ったが、女医さんに何でもないような顔で 「胃腸炎ですね。多分」 と告げられたので、私が感じる痛みの大きさに比べ、きっと現状はショボいのだろう。

 最近22歳になった私は、「痛み」 がなんだか好きだ。

 マゾヒストであるという告白をしているわけではなく、こう……自分の身体に感動しませんか。あ、ちゃんと機能している!というような。
 しばらく触っていなかった機械類のスイッチを入れてみたらちゃんと機能して、「おー、動く動く」 と笑みを浮かべるような感覚だといえば、少しは共感してもらえるのだろうか。

 子供の頃は怪我が絶えず、よく痛みに泣いていた。しかし大人になると怪我をする機会は激減し、また、幼かった頃の自分なら泣いていたくせに今では 「ああ、痛いっていうか面倒臭い」 という可愛げのない反応が多い。

 一部の社会学者や哲学者がいう「現代人は身体の感覚が希薄になっている」という説は、間違っていないんじゃないかと思っている。
 そんな現代人代表の私は、胃があまりに痛ければ 「ここに胃が存在しているんだ!」 と確認し、嘔吐すれば 「胃にあるものが食道を逆流してきたんだ!」 と感動し、発熱すれば 「熱が出たってことは、何か悪い細菌を察知したのかな!?」 と人体の優秀さに舌を巻いた。

「人体の不思議」 と言葉にすれば簡単だけど、それを実感するには、私の脳みそは普段あまりにも鈍い。脳だってゆとり仕様。
 痛みを感じるのも、身体のメンテナンスの一環としてたまには必要なのかもしれない。

 何が言いたいのかというと、鳩尾のあたりに胃が存在しているのはよく、よーくわかったから、あんまり激痛を生成していないで、そろそろ治ってほしい。


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